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拠点・奈良県大和郡山市 運営者・浅野善一

県民、事前に計画知る機会なく

県の進め方に批判

近鉄奈良駅前 行基広場の大屋根設置

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2010年7月21日
大屋根設置の計画がある行基広場。正面の三角屋根の手前に、右の近鉄奈良駅の駅ビルから左の東向商店街アーケードまで高さ10メートルのガラス張りの屋根ができる=奈良市東向中町
 奈良市の近鉄奈良駅前の行基広場に計画されている大屋根の問題で、県が事前に計画を明らかにしていなかったことに対し、県民の間から「行基広場は奈良のシンボル的場所であり、県の認識の甘さが見える」と批判の声が上がっている。
 大屋根は雨よけが目的で、計画が明らかになったのは県のホームページなどで設計の入札が公告された今月9日。古都奈良の玄関口の景観に影響することから論議が起きている。
 担当の道路・交通環境課はこれまでの取材で、計画について「外に出していなかった」と明言している。本年度の当初予算に設計の業務委託費と工費の一部を合わせた3000万円が計上されたが、前年度末に県議会や報道機関向けに行った予算案の説明でも、大屋根に触れる説明はなかった。その理由について「大きな分類で分けて説明している。時間的制約があり、すべてにわたり説明できない。例えば、個別の道路の舗装の計画まで説明できない」としている。
 同課は現時点について「スタート地点、粗々の段階」とし、既定の流れだが、設計の過程で広場の施設を管理する奈良市や敷地所有者の近畿日本鉄道、大屋根に接する地元商店街などから、柱の位置などについて意見を聞く。デザインについては近代的で開放感のあるものとしており、色や形状、材質などはこれから検討。事前に奈良市景観課に計画を伝えており、同課と協議し、必要な手続きを経て、周囲の景観に配慮したものにするという。
 こうした県の進め方に対し、県民の受け止め方で、賛成、反対どちらの立場にもほぼ共通しているのは、事前に計画を知る機会がなかったことへの批判。
 奈良市の画家大八木恵子さん(47)=5*SEASONの名で活動=は有志で計画に対する県民の声を県に届ける取り組みを進めているが、「行基広場は、近鉄で訪れた人が地下の駅から地上に出て最初に触れる奈良の玄関口。市民にとっては憩いの場でもある。一般の道路や橋の工事などと同列に扱うのは、あの場所を軽んじているからではという気がする」と指摘、「県の独断でなく再検討を」と求める。その上で「県政と対立するのではなく、奈良を愛する者同士が一緒に円卓で井戸端会議を開けるといい」と提案する。

有志で県民の声届ける取り組みも

 大八木さんが大屋根計画に対する県民の声を集めるため開設しているブログ「LOVE! NARA!」はhttp://bit.ly/lovenaraからアクセスできる。23日午前零時までに届いた分を同日中に県に届ける。(浅野善一)
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