地域の身近な問題を掘り下げて取材しています
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拠点・奈良県奈良市 運営者・浅野善一
野鳥の宝庫、今は昔
平城宮跡 ―2―
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2012年3月26日
↑平城宮跡の草地を飛び回るヒバリ=奈良市
↑平城宮跡内。池の水が減り、湿地になった場所と復元された大極殿=奈良市
 奈良市北部にある平城宮跡は、平城遷都1300年記念イベントが開催された一昨年、復元された朱雀門や大極殿を目当てに全国からたくさんの観光客が訪れ、大いににぎわった。しかし、朱雀門や大極殿など昔の建物が復元される以前の平城宮跡は、数多くの種類の野鳥が観察される「野鳥の宝庫」でもあった。新聞、野鳥雑誌などにも紹介されたことから、愛好家の間では奈良県の野鳥観察ポイントとして全国的に知られる場所であった。
 当時は、現在大極殿のある場所から近鉄奈良線の踏切を越え、朱雀門までの間に、広大な草地や湿地が続き、地上の草むらに営巣するヒバリや、チガヤの葉をクモの糸で束ねて巣作りをするセッカなどが、草原の至る所で繁殖していた。
 秋になると高山の夏鳥ノビタキが草地のススキやセイタカアワダチソウに止まり、旅鳥のムナグロやチュウシャクシギが湿地で餌を採るなど、それぞれが渡りの途中、平城宮跡で羽を休め、南へと渡って行った。
 さらに冬になるとホウアカやツグミなどが越冬するほか、アリスイやコミミズク、チョウゲンボウ、ハイタカなども見られた。
 平城宮跡には幾つかの池が点在し、水面ではカイツブリやバンが営巣。池の縁にある低木ではモズが子育てを行っていた。また、池の周囲にはアシ原が広がっていたため、夏鳥のヨシゴイやオオヨシキリが繁殖していた。
 平城宮跡のアシ原は、ツバメのねぐらとして近畿では有名な場所であった。秋、渡りの時期が近づくと、毎日夕暮れとともにどこからともなくツバメの群れがやって来て集団になり、1000羽以上ものツバメがアシ原の上空を乱舞。その後、次々とねぐらに入る姿はまさに壮観であった。
 紹介した野鳥たち以外にもツツドリ、アカアシシギ、セイタカシギ、トラフズク、コホウアカなど、数多くの珍しい野鳥が確認されている。
 現在、平城宮跡は観光客を誘致するため多くの建造物が立ち、遊歩道や駐車場などが整備され、環境が大きく変わりつつある。点在した池の数は減り、湿地や草地の面積も少なくアシ原も減ったため、観察できる野鳥はヒバリやツグミを除き、種類や数は当時に比べ大きくし減少してしまった。
 遺跡を復元し、遠い昔の人々の暮らしを知らしめることも重要だと思うが、先人たちが残した自然遺産を後世に受け継ぐこと、アシ原や草地、池や湿地などといった環境を保全し、同じ環境の中で多くの生き物たちと共存していくことも、これからの私たちにとって大切なことではないのだろうか。(よな・しょうぞう=野鳥写真家、生駒市在住)=毎月第2、4月曜に更新
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