地域の身近な問題を掘り下げて取材しています
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拠点・奈良県奈良市 運営者・浅野善一
駐車場隣で子育てに苦労
愛鳥週間に共生考える ―5―
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2012年5月14日
↑親鳥(雌)に駆け寄るケリのひな=2012年4月20日、生駒市内
↑辺りを警戒しながら、ひなの様子を見守るケリの雄=2012年4月20日、生駒市内
↑ケリがいた宅地と駐車場に囲まれた小さな田んぼ=2012年4月24日、生駒市内
 毎年、わが国では5月10日から16日までを愛鳥週間(バードウイーク)と定め、期間中、全国各地で野鳥の観察会や展示会などさまざまな催しが行われる。
 愛鳥週間は1950年、野鳥保護の思想を普及する目的で設定されたものである。しかしこの時期は野鳥たちにとって繁殖期にあたり、鳥たちは警戒心が強くなる。したがって、野鳥観察の際は繁殖行動の障害にならないよう配慮し、野鳥たちの生活とそれを取り巻く環境について理解することが大切ではないだろうか。
 ところで私は先月下旬、所用のため生駒市南部にある「市南コミニュティセンターせせらぎ」を訪れた。その際、第2駐車場に車を止めドアを開けた瞬間、「キェッ、キェッ、キェッ」とけたたましいケリの鳴き声して、驚かされた。
 ケリは本州各地の水田や川原、畑や草地などに生息するチドリの仲間である。体長は約36センチ。くちばしは黄色で先端は黒く、頭部から胸にかけては灰色で背面は茶褐色。腹部は白く、胸の部分に黒帯があり、目が赤いのが特徴だ。
 鳴き声がした辺りを見回すと、駐車場の隅にわずか50坪ほどの田んぼがあり、丈の低い草の間にケリの姿を見ることができた。徐々に近づいてみると突然飛び立ち、私を威嚇するように鳴きながら頭上を飛び回った。そして再び元の田んぼにゆっくりと舞い下りた。
 不思議に思えたので、車に戻り、運転席から双眼鏡で観察することにした。よく見ると、田んぼの中には雌雄2羽のケリが確認できた。さらに草と草の間をつぶさに探索すると、なんと生まれて間もないケリのひなが歩き回っているではないか。ひなの数は全部で3羽。私の姿を見て親鳥が危険を察知し、ひなたちに知らせていたのだろう。しばらくすると、ひなたちは親鳥のもとに駆け寄り、おもむろに親鳥のおなかの下に潜り込んだ。
 びっくりさせてしまい申し訳なく思ったが、大勢の人々が利用する駐車場に隣接する小さな田んぼ。親鳥は頻繁に威嚇を繰り返しながら、苦労して子育てを行わなければならないのだろう。周囲を住宅地や駐車場に囲まれたわずかばかりの水田にひっそりと暮らすケリの姿は、私たち人間が「生き物たちとの共生」を叫びながら宅地開発によって野鳥たちのすみかを奪い、日々の生活を脅かしている実態を垣間見るようであり、心苦しさが込み上げる。
 地球の自然はなにも人間だけのものではないはずである。将来にわたり、あらゆる生き物たちに配慮しながら生活し「共生」を目指していかなければ、そのうち私たち人間もその存在が危うくなる時期が来るのではないだろうか。
 (よな・しょうぞう=野鳥写真家、生駒市在住)=毎月第2、4月曜に更新
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