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拠点・奈良県奈良市 運営者・浅野善一

〈視点〉検証必要、まず情報開示を

奈良県市町村総合事務組合 仕組債売却で元本割れ

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2012年6月15日 浅野善一

 奈良県市町村総合事務組合(管理者、小城利重・斑鳩町長)が退職手当基金の運用目的で購入した仕組債が、売却に伴って大きく元本割れしていたことが分かった。この問題に対する疑問は二つ。一つは19億円に上るとみられる元本割れを、損失ではなく、運用益の範囲内での現象であるとする組合の説明。もう一つは、公的基金をこれほど浮き沈みの恐れがある方法で運用してまで、高い金利を求める必要があるのかということ。

 組合事務局は、元本割れについてこちらが使った「損失」という言葉を否定した。退職手当基金は2011年度の時点で160億円余りあった。うち70億円は国債や地方債などでそれまでに得た運用益。仕組債はその運用益分で購入したものであるという。つまり、残りの元本部分に当たる90億円は維持した上での運用だから、損失ではないという理屈だ。

 こうも言う。「仕組債の売却だけをとらえて言うのはおかしい。一つの債券だけをとらえれば、その時々の相場はある。(元本割れは)運用の中の一つの現象」。

 しかし、このような説明にどれだけの理解が得られるだろうか。

 基金の扱いは同組合基金条例で定められている。条例は基金を有価証券に代えることを認めてはいるが、「最も確実かつ有利な方法」という前提が付いてる。

 組合事務局は仕組債購入の理由について、当時のさまざまなデフォルト(債務不履行)の恐れやペイオフ解禁(保護される預金の上限を1000万円とする)、国債の金利の低さや格付けの引き下げを挙げ、元本保証の商品がない中でリスクの分散を図ったとする。購入に当たっては「リスクの軽減を図るため、円高でも利息が得られる安全な債券を注文した。市中金利より、べらぼうに高かったわけではない」とする。

 ただ、売却については金融機関側から「債券なので売買できるが市場は狭い」との説明もあったという。事務局は「取り崩しは異常事態で、持ちきりであれば運用益が上がっていたはず」とするが、基金は突然の出費にも備える性格のものであり、売却によって大きな元本割れが発生する恐れはあった。

 組合事務局に退職手当基金の運用状況について取材を申し入れた際、保有していた仕組債を売却したことを明らかにした。売却額を尋ねると、開示の根拠となる情報公開制度が組合にないとして、答えなかった。元本割れの有無さえ明らかにしなかった。このため、取材では退職手当負担金を支出するなどしている市町村に対し片っ端から、保有している組合の文書を開示請求するほかなかった。

 組合が「損失はない」と説明しても、十分な情報開示がなければ、負担金を支出している市町村の住民はそれを検証できない。組合は情報公開条例の制定を準備しているというが、制度の有無に関わらず、まずは情報を開示すべきである。

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