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拠点・奈良県大和郡山市 運営者・浅野善一

仕組債保有、基金取り崩しの一方で長期化

奈良県市町村総合事務組合 運用の経過分かる

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2012年8月24日 浅野善一
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 奈良県市町村総合事務組合(管理者、小城利重・斑鳩町長)が退職手当基金の運用目的で保有していた仕組債を満期前に売却し、元本割れにより20億円が消失した問題で、仕組債の導入当初からの運用の経過が、関係者への取材で分かった。基金の取り崩しが進む一方で、仕組債は早期償還が減り、保有が長期化、中途売却による元本割れの恐れが増していった。

 組合が購入した仕組債は、円相場や長短金利の差に連動して、受け取る利息の金利が変わる円建て外債。仕組債は元本が保証された上で大きな利息が期待できるとされるが、連動する指標が販売した証券会社などが決めた条件に達すると、満期前に解約になる契約内容になっている。その際は元本が満額償還される。

仕組債の運用状況
(年度)
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11
早期償還になった
仕組債の数
0 6 6 4 2 4 5 4 1 0 1 1
購入した仕組債の数 4 13 9 8 2 4 5 3 0 0 0 0

 一方、この指標が悪化すると、利息の金利がゼロになるなど不利な条件のまま満期まで保有し続けなければならず、購入者が中途売却をすると、大きく元本割れする恐れがある。

早期償還ありき?で導入

 組合事務局はこれまでの取材で、「(仕組債を導入した当初の事務局は)早期償還ありきで、長期保有になるとは予想していなかったのだろう」と答えている。

 関係者によると、組合が購入した仕組債は2000年度の導入以降、計48銘柄。満期はほとんどが20―30年と長かったが、34銘柄が早期償還だった。特に当初の00、01年度はほとんどが3カ月から2年で償還になっていた。しかし、その後は円高など連動する指標の悪化で、保有期間は次第に長期化していった。10、11年度の売却で問題の元本割れが発生した13銘柄は、保有期間が短くても3年半に、長いものだと10年近くに延びていた。

 一方、この間に退職手当基金は取り崩しによって減少を続けていた。組合を構成する市町村が毎年度支出する退職手当負担金による収入だけでは、その年度に退職する市町村職員に支給する手当を賄えなくなる状態が続いたことによる。基金残高は01年度で161億円あったが、仕組債売却直前の09年度末は75億円まで減少した。仕組債には基金の中から常時、60―70億円を充てていた。いずれ仕組債を現金化しなければならない時期が来ることは予想されていた。

負担金引き上げない方針の下でも購入 岡井・河合町長の管理者在任中

 こうした状況下、05年度から09年度まで組合管理者を務めた岡井康徳・河合町長は在任当時、「町村の財政は厳しく、基金の残高がある段階で負担金を上げる必要はない」との方針を示していた。しかし、関係者によると、岡井町長の在任中にも組合事務局は12銘柄を購入していた。このうち7銘柄は10、11年度の売却で元本割れした。岡井町長は先月20日の取材で、基金の運用方法については把握していなかったとし、「(取材を受けるまで)仕組債という言葉すら知らなかった」と答えている。

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