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昨今の釣りブ―ムで、山奥の湖沼や渓流など今まで人々が立ち入ることのなかった場所に、多くの釣り人が進出するようになってきた。そのため警戒心が強く、その姿を目にすることの少なかった清流に暮らす野鳥たちも、日々生活を脅かされる状況になっている。 奈良県に生息し清流に暮らす野鳥は、カワセミやヤマセミ、カワガラス、キセキレイなどがいる。このうちカワセミやキセキレイは警戒心の弱い個体も多く、私たちの身近にある河川や市街地の公園のため池などでも観察することができる。しかし、ヤマセミやカワガラスは渓流の深いよどみのある場所や滝つぼ、川の中から突き出た岩場などがある環境を好むため、都会にすみかを求めるのは難しいようだ。 ヤマセミは北海道から九州まで、山地の渓流に留鳥として生息する。体長約38センチで、ハトよりやや大きめの野鳥だ。くちばしの色は濃い灰色。頭部には冠羽があり、体の背面から尾にかけて白地に黒い無数の斑点がある。腹部は白く、同様に黒い斑点が見られる。雄ののどの部分には淡いオレンジ色の部分があり、雌は翼の裏側の脇の付近にオレンジ色の部分がある。川の縁にある樹木や岩場に止まり、水の中にイワナやヤマメ、ウグイなどの獲物を見つけるとダイビングして捕らえる。「キャラッ、キャラッ」と聞こえる大きな鳴き声が特徴だ。 一方、カワガラスは、ヤマセミ同様、北海道から九州までの山地の渓流に留鳥として生息する。体長は約22センチ。ムクドリよりやや小さな鳥で、くちばしは黒く全身茶褐色だが、翼の先端と尾に濃い紫色の部分がある。川の流れに沿って水中を移動し、川底にいるカゲロウやトビゲラなどの水生昆虫を捕らえ生活している。渓流の岩場に生えているコケなどを使って、滝の流れの裏側などに巣をこしらえる。繁殖時期が早い鳥として知られ、1月中頃には巣作りを開始する。 餌や狩りの方法などの都合上、清流がなければ暮らしていけないヤマセミとカワガラス。渓流や山奥の湖沼で釣りを楽しむ全ての人々は、ごみや空き缶、不要になった釣り糸などを放置することなく持ち帰り、清流を守ることに努力しなければいけないと私は思う。そのことが、いつまでも良好な釣り場を維持していくことにつながっていくと考えるからだ。 (よな・しょうぞう=野鳥写真家、生駒市在住)=毎月第2、4月曜に更新 ◇連載前へ >>第20回「水鳥受難、ごみ散乱の水中―奈良市の水上池」
◇連載次へ >>第22回「冬鳥、寒さ避け集まる―環境多様な馬見丘陵公園」
◇これまでの「やまと鳥事情」
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当局からの発表に依存しなくても伝えられるニュースがあります。そうした考えのもと当サイトを開設しました。(2010年5月12日)
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