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いつまでも厳しい寒さが続く今年の2月。極寒の地から逃れるように、冬鳥たちはより暖かい場所を求め移動する。そのため、奈良県でも私たちの身近な公園や住宅地の庭先などでウソやシメ、レンジャクなど例年より多くの種類の野鳥が観察されている。そんな中、最近あまり見られなくなった野鳥がいる。スズメだ。 スズメは昔話「したきりすずめ」でもおなじみのように、古くから多くの日本人に親しまれてきた野鳥である。全国の里山や市街地の公園、住宅街などに生息し、体長約14センチ。くちばしは黒く、頭部は赤茶色。背面は茶褐色で翼の縁に黒や白が混じり、複雑な模様をしている。腹部は淡いクリ―ム色で顔面は白く、目の回りとほおに黒い部分がある、実に愛くるしい顔をした野鳥だ。 しかし近年、スズメたちの個体数は減少の一途をたどっている。その原因はいくつか考えられるが、日本の農業が衰退し、スズメの好物であるヒエやアワ、ムギなどの穀物を生産する農家が減少したため、餌が乏しくなったことや、私たち人間の住居が日本家屋からアルミサッシなどの新建材を使った建築様式に変化したことなどが挙げられる。スズメは軒の隙間や戸袋などで繁殖するが、巣を作るための隙間が無くなり、繁殖が難しくなっているからだ。 スズメ以外にも私たちの生活様式の変化で、餌場の変わった野鳥たちもいる。セグロセキレイやハクセキレイだ。セグロセキレイは日本固有の野鳥で全国の里山や小川、ため池などに生息し、体長約21センチ。くちばしは黒で、頭部から背面にかけても黒色。目の周りと腹部は白色で尾羽根が長いのが特徴だ。 本来は田畑や池の周りで昆虫を捕らえ生活している野鳥だ。しかし、近年郊外にコンビニエンスストアやセルフサービスのガソリンスタンドなど24時間営業の店舗が増えている。そのため夜間、店舗の周辺には明かりに誘われて多くの昆虫が集まってくる。それを目当てに、明け方からハクセキレイやセグロセキレイが現れる。店舗の駐車場を絶好の餌場にしているのだ。餌場には困らないセグロセキレイだが、巣作りの場所には不自由しているようだ。雨どいや屋根の隙間、放置された廃車のマフラーなど、さまざまな場所を見つけ巣作りを行っている。 スズメやセグロセキレイに限らず、私たち人間の生活様式の変化が、多くの野鳥たちの生活に異変を与えているのだ。このようなことが生態系にどのような影響があるのか、実態を調査すべきではないだろうか。 (よな・しょうぞう=野鳥写真家、奈良県生駒市在住)=毎月第2、4月曜に更新 ◇連載前へ >>第23回「ため池減り、すみか失う―カモなどの水鳥」
◇お知らせ 筆者の都合によりしばらく休載します。
◇これまでの「やまと鳥事情」
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当局からの発表に依存しなくても伝えられるニュースがあります。そうした考えのもと当サイトを開設しました。(2010年5月12日)
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