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拠点・奈良県大和郡山市 運営者・浅野善一

ガラス張りの大屋根、県が行基広場に

近鉄奈良駅前 古都の玄関口、景観で異論も

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2010年7月13日
県がガラス張りの大屋根設置を計画している近鉄奈良駅前の行基広場=奈良市東向中町
県が作成した大屋根のイメージ図。上は平面図、下は側面図=県の入札資料から
 県は奈良市東向中町の近鉄奈良駅前行基広場にガラス張りの大屋根を設置する。駅利用者らの雨よけが目的で近代的なデザインにするとしているが、古都奈良の玄関口にふさわしくないのではとの異論も出ている。
 奈良公園などへの入り口となる近鉄奈良駅前の行基広場には、奈良時代の僧行基を据えた噴水や観光案内板、いすなどがあり、市民や観光客に親しまれている。敷地は近畿日本鉄道の所有で、敷地上にある行基の噴水などは奈良市が管理している。
 9日に大屋根設計の入札参加業者を募る一般競争入札の公告があった。県営繕課の入札資料や同道路・交通環境課の説明によると、建築面積約500平方メートル、高さ約10メートルで、行基広場全体を覆う。構造はガラス張り、鉄骨造りなどを想定、近代的で開放感、透明感のあるデザインにするとしている。工費は約1億7000万円を見込んでおり、来年11月までの完成を予定している。
 設置の理由について道路・交通環境課は、行基広場は道路と一体の交通の結節点、にぎわい空間、待合い空間であるとし、雨を防ぐことで利便性の向上を図るとしている。デザインは、奈良市とも協議しながら、景観に配慮した色合いや形状にするという。
 一方、大屋根設置の計画は事前に明らかになっていなかった。同課によると、2010年度の当初予算に設計費と工費の一部が盛り込まれているが、県予算全体の項目が多岐にわたるため、当時の県議会や報道機関への予算の説明では具体的に触れられなかったという。このため、計画が明らかになったのは県のホームページなどで設計の入札が公告された9日の時点。
 大屋根の設置に対し県民の間からは「計画を知らなかった。いつ決まったのか。古都の玄関口にはふさわしくないのでは」との異論も出始めた。奈良市まちづくり審議会委員も務めた同市在住の作家寮美千子さん(54)は「近鉄奈良駅は世界遺産を抱える古都奈良の入り口。それだけ重要なものを民意も問わず、熟慮せず、さまざまな意見を出し合う場も持たず決めてしまうのは大きな疑問。デザイン以前の問題だ。ただ屋根を付けるということではなく、そういう重要度を理解してほしい」と話している。
 県は電子入札で26日まで同設計の入札を受け付け、27日開札する(浅野善一)
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