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拠点・奈良県奈良市 運営者・浅野善一

大和川の心を撮る

作品が話題の映画の原点に

写真家・金勝男さんに聞く

メール
2010年7月28日
写真集「大和川慕情」を手に、作品への思いを語る金勝男さん=2010年7月27日、三郷町勢野東1丁目の大和川
 大和高田市の素朴なたたずまいを舞台に、家族のきずなを描いて話題を呼んだ映画「大和川慕情」(横田丈実監督)。その原点となったのが、大阪府八尾市在住の写真家・金勝男さん(64)が自費出版した同名の写真集だ。作品からは、自然と生活が織りなす河川文化の姿や大和川の心が見えてくる。金さんはこの川のどこにこだわり、表情豊かな姿を掘り起こしていったのか、話を聞いた。(聞き手・浅野詠子)
 ―汚い川と一蹴されがちな大和川です。しかし、写真集「大和川慕情」には人間くさい河川の魅力がよく現れ、河川改修の工事風景にさえ詩情が漂っています
  実にいろいろな顔を持っている面白い河川ですね。自転車が走り、こいのぼりが泳ぎ、祭ばやしも聞こえる。大阪府側の下流に行けば、残念ながらコンクリート一色になってしまう護岸は多くなるけれど、それでも僕はそこで何かを感じてきました。
 ―前作は、平群町を舞台にした写真集「業平ロマンと花の里」(2001年)でしたね。奈良県でも有数の花の産地ですが、町のどこに引かれましたか
  僕の住んでいる八尾市に近いということもあるけれど、平群町に着眼したのは偶然のこと。雨の中に咲いたモクレンの花に魅せられ、それから連作の取り組みが始まりました。何だかこの町は、奈良の都と難波の都の間にある「隠れ里」のような魅力を感じます。
 ―奈良県の新たな魅力を発掘してくださったことになりますが、次作の大和川の作品も同様に力強いものを感じます。その「大和川慕情」の刊行は、タウン紙「うぶすな」での連載がきっかけでしたね
  写真の連載を頼まれたとき、「そうだ!大和川にしよう」とすぐに決めましたが、僕の心の中には、伏線が張られていました。一つは、大和川が支流と交わる安堵町窪田の土手に生えている樹木。もう一つは大阪府柏原市のせきに漂っていたごみです。
 ―安堵町の神秘的な光景は写真集の表紙に、そして柏原市の方は裏表紙になり、いずれも代表作ですね。金さんの手に掛かると、河川に浮かんでいるサッカーボールなどは単なるごみではなくなり、妙な生活臭を発して迫ってきます
  僕が写真を学び始めた48歳のころ、八尾市生涯学習センターの写真講座の先生に初めて褒められた作品が、大和川に浮かぶごみの写真でした。「環境問題の行事にぴったりの一枚ですね」と。
 ―50才を直前にスタートした写真。運送業の傍ら、こつこつと努力を重ね、厳しい審査がある富士フォトサロンでの初の個展開催にこぎつけたのが55歳でした。何だか勇気が出てきます。なぜ写真を撮ろうと思ったのですか
  友人がマクロレンズを持っていて、「いっぺんのぞいて見ろ」と言われたので、道端の小さな雑草をファインダー越しにのぞくと、うぶ毛みたいな繊細できれいなものを体中に生やしていました。「ウワーッ」と感動しました。とりあえず、いっぺん写真というものをやってみようと、生涯学習センターの門をたたいたのです。
 ―雑草との出会いが人生を深めたのですね
  それ以来、目につくもの、目につくものすべてを撮り尽くしたように思います。写真の先生からは「ペンペン草も生えんな」と言われたほどです。
 ―そこに「大和川慕情」の原点がありそうです。大和川は少しも汚い河川ではなく、それどころか原色の草花たちが健気に生きていることが金さんの写真集から伝わります。次はどんな作品にお目にかかれるでしょうか
  やはり大和川です。桜井市の上流にさかのぼって撮影していますよ。僕は写真の趣味が見つかって本当に良かったと思っています。
 写真集「大和川慕情」は1000円。金さんの連絡先は電話090(1586)8151。
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