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拠点・奈良県大和郡山市 運営者・浅野善一

大和・笠縫氏ゆかりのスゲ細工展示

大阪深江に郷土資料館が開館

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2010年8月1日
オープンした深江郷土資料館を訪れる人々。手前は、伊勢神宮の式年遷宮に奉納したものと同種の大型の菅笠=2010年7月31日、大阪市東成区深江南3丁目
 大和の古代氏族・笠縫氏ゆかりのスゲ細工を展示する「深江郷土資料館」がこのほど、大阪市東成区深江南3丁目にオープンした。江戸時代の伊勢参りで盛んに作られた道中のすげがさや、伊勢神宮に奉納する儀式用のかさなどを保存会の人たちが再現して展示。篤志家の寄付により建てられ、近くには大阪府史跡「摂津笠縫邑跡(かさぬいむらあと)」(飛鳥時代以降)がある。地域の魅力の掘り起こしに大きな役割を果たしそうだ。
 すげがさの名産地として知られ、昔は青々としたスゲ田が広がっていた深江。その光景は近代化の波とともに消えていったが、同区役所が4年前、再現を試みようと、都市公園の一角に4平方メートルの面積でスゲの栽培を開始した。これを知った地元の石川健二さん(62)さんが「スゲ田の用地に使って」と約60平方メートルの土地の提供を申し出、地域住民らが栽培を成功させた。石川さんは、郷土資料館の建設にも情熱を傾け、私費を投じて先月、開館にこぎつけた。
 深江の地は、良質のスゲを求めて笠縫氏が大和から移住したという伝承があり、万葉集にある「笠縫の島」を指すともいわれる。付け替え前の旧大和川と平野川に挟まれ、南方を暗越奈良街道が通る。「古代から続く菅笠(すげがさ)の里・深江」と銘打ち、公益団体の大阪コミュニティー・ツーリズム推進連絡協議会「大阪あそ歩」事務局は7月31日、一帯での散策会を催し、市民ら11人が郷土資料館を訪問。伊勢神宮の式年遷宮に奉納した直径170センチものかさを再現した作品に見入り、保存会メンバーの解説に聞き入っていた。
 スゲ細工の技術は大阪市の無形文化財。開館を機に、市は「ふるさと納税」を原資とする市民活動推進基金を使って郷土資料館の解説パンフレットを作成。古文書や古絵図などの写真を豊富に掲載し、旧深江村で発展した往時のものづくりの息吹を紹介している。
 近くには人間国宝の釜師、故角谷一圭氏の生家が残り、郷土資料館では作品を常設。6歳で鋳物の道に入った明治生まれの角谷氏の偉業を伝え、名品の数々を鑑賞できる。長男で釜師の征一氏は、同資料館を運営する社団法人の理事を務め、「すげがさ以外にも、地元の小学生の絵画作品なども展示し、地域の文化振興の拠点にしたい」と話している。(浅野詠子)
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 深江郷土資料館の開館日は土・日曜日、祝日。問い合わせは電話06(6977)5555。
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