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拠点・奈良県大和郡山市 運営者・浅野善一

奈良で一箱古本市 好きな本持ち寄り交流

空き店舗や町家を利用 開催場所にも意味求め

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2010年12月14日
本好きの交流の場となっている「一箱古本市」=12月4日、奈良市北京終町の「町屋ゲストハウスならまち」
 本好きが読まなくなった本などを箱やかばんに詰めて持ち寄り、売る―。そんな個人参加型の「一箱古本市」が奈良市内で開かれている。目的は本を通じた客との交流。開催場所にも意味を求め、市場の空き店舗や町の小さな神社、町家を生かしたゲストハウスなどを利用、地域と人をつなぐ役割も果たしている。奈良の新たな地域文化活動といえそうだ。今月4日に奈良市の奈良町で開かれた一箱古本市「第5回大門玉手箱INなら座」を取材した。
 主催しているのは奈良市を拠点にイベントの企画や出版物の編集に取り組むグループ「翼果舎」(メンバー4人)。一箱古本市はいわば「本屋さんごっこ」で、2005年に東京の書店街「不忍ブックストリート」で始まった。
 翼果舎は2009年8月に1回目の一箱古本市を開いた。会場は集客に悩む奈良市今小路町の大門市場。「市場ににぎわいを」という思いも込めて市場の空き店舗を利用した。以後、市場が閉鎖されることし1月まで合わせて3回開いた。その後も「大門玉手箱」の名は残し、10月に奈良市鍋屋町の初宮神社で4回目を開いた。出店料の一部は老朽化している神社の修繕のための費用として集め、氏子代表に渡した。翼果舎の新井忍さん(48)は「開催場所にも意味を求めている」とその狙いを説明する。
 5回目となる今月4日の一箱古本市は奈良市北京終町の「町屋ゲストハウスならまち」(安西俊樹代表)で開いた。ゲストハウスは素泊まりの安価な宿泊施設で、個室もあるがユースホステルのように相部屋が基本。市内では町家を利用するなどした施設が増えていて、現在7、8軒あるという。奈良旅行の宿泊施設として話題になりつつあるゲストハウスを知ってもらおうと考えた。
 「町屋ゲストハウスならまち」は築約100年の商家。かつては質店だった。30畳ほどの広さの1階を借り切った。遠方からの出店者には宿泊してもらい、奈良の魅力も味わってもらった。
 出店者は箱主と呼ばれる。21店が参加した。県内を中心に関西や遠くは東京、長野、愛媛からの参加もあった。職業は主婦や定年退職した人、研究者、地域情報紙の記者、インターネット古書店の運営者などさまざまだった。
 一箱の出店料は500円。箱には50~70冊の本が入る。売り値は自由。3箱ぐらいが持ち込みの上限だ。営利は目的でない。
 座敷などには段ボール箱などに入った本が並んだ。奈良に関わる本を中心に販売する人など、箱主は自分が好きな分野の本を選んで持ってきていて、同じ関心を持つ客との間で話も弾む。本を通じて交流の輪が広がった。翼果舎の下村信人さん(40)は「箱ごとに個性が出る」といい、一箱一箱を「小さな宇宙」にたとえる。さまざまな「小宇宙」に触れられるのが一箱古本市の面白さだ。手作りの古本市は伝統的な商家のしっとりとした空間にもよくなじんでいた。
 「大門玉手箱」のもう一つの魅力は箱主による手作り品のフリーマーケット。絵はがきや木の小物、菓子などが古本に交じって並んだ。 箱主の一人、生駒市の高校2年中田あゆみさん(17)は母親の代わりに参加した。自身も本好きで「いろんな分野の本を見ることができた。手作り品のフリーマーケットもあり良かった」という。自分の本も並べ、好きな猫の小説が売れた。
 東京の岡野陽虎さん(45)はゲストハウスに泊まりがけで参加。昨年から東京の一箱古本市に出店しているが東京以外は初めてで、「参加者が知らない人ばかりで新鮮。古民家の中で開かれる一箱古本市に参加するのも初めて」と満足そうだった。

1月30日に奈良の初宮神社で

 次回の大門玉手箱INなら座は1月30日正午ごろ~午後4時、奈良市鍋屋町の初宮神社で開かれる。出店者も募集している。出店料は一箱目が500円。二箱目からは300円。個数は3箱ぐらいまで。出店料の一部は初宮神社の修繕費として集める。問い合わせは翼果舎の新井さん、電話090(6982)0548。
(浅野善一)
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