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拠点・奈良県奈良市 運営者・浅野善一

〈視点〉資金調達の研究さらに必要

「金融に強い自治体職員の育成急務」との識者も

将来負担比率の高い奈良市で考える

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2011年4月10日 浅野詠子
 中核市の中でも財政健全化法の将来負担比率が極めて高い奈良市。過去の歴代の市政が身の丈を越えた借金をしてきた結果だが、資金調達の在り方についての検証はまだ行われていない。工事などの発注と同様に、透明性や競争性を課題にしなくてもよいものだろうか。釈然としない思いを抱きつつ、何かのヒントにしたいと、「地方債市場の現状と課題」と題したフォーラム(東京大学大学院経済学研究科・経済学部「地方公共団体金融機構寄付講座」など主催)にこのほど参加し、地銀の公務金融担当者の本音や自治体の改革事例をつぶさに聞くことができた。自治体と金融機関とが相互の財務情報を共有化していくことの大切さがあらためて言及され、金融の課題と正面から取り組むことのできる自治体の人材育成が急務であることが強く指摘された。
 フォーラムは同大学で開かれ、兵庫県川西市の企画財政部参事・松木茂弘さんが報告。民間金融機関からの資金調達で工夫する点を具体的に解説し、「利率の見積もり合わせの前に、数行の金融機関と事前に地方債市場の情勢などの情報交換を行っておくと、資金調達方法を考える際に大きく役立つ」と話した。また、見積もり合わせや入札にはリスクもあり、これを回避するためには、「地方債の資金調達の多様化と借り入れ時期の平準化を図ることで対応していく」とした。
 一方、討論者の関西学院大学大学院教授・小西砂千夫さんによると、松木さんのように研究熱心で、かつ22年間にわたり財政課で活躍できる職員は全国的には大変珍しい存在であるという。それどころか自治体によっては依然、地方債を調達するのに行員を役所に呼びつけたり、また、市場の動向を無視して、金利を強引にまけさせたりする現実があると松木さんは指摘。こうした現実を踏まえて小西さんは「自治体における金融リテラシーが必要」と訴えた。
 大手証券会社の金融市場調査部副部長は、地方債計画における市場公募債の割合が3割に達した動向などを踏まえ、「ステークホルダーとしての市場とのかかわりがより重要になる」として、「新しい地方金融論には、自治体のファイナンス的な研究が大切」と話した。
 全国的には、自治体への融資で入札が実施される比率は推計で40%程度と見られ、他にプロポーザル方式の導入もあり、奈良市のように随意契約に限定している自治体は少数になりつつあるようだ。神奈川県内に本店がある地方銀行の公務金融渉外部長は、こうした状況から「預金金利の自由化や入札制度導入、公募債化によって、かつての指定金融機関の役割は崩壊している」と、個人的見解を示した。一方、地銀の立ち位置は、「一県一行主義」という地盤限定の傾向が続く中、自治体との関係は依然として密接であるとし、川西市の松木さんも「指定金融機関と自治体の双方にメリットがあるようなギブアンドテイクをしていくことが求められる」と主張していた。
 奈良市は、一般会計の年間借金額を示す公債費は181億円(2009年度)。うち約3割程度が政府資金からの借り入れで、残る縁故債のすべてが指定金融機関と随意契約で調達する。同市財政課の起債担当者は「必ずしも入札が有利とは限らず、随意契約の方が有利な金利で調達できるケースもあるが、入札や見積もり合わせの導入は前向きに検討する」と話す。
 同市には2942億円の将来負担額があり、公社や財団、特別会計などを含むすべての借金を合算した金額だ。巨額の不良資産を抱え、信用力が問われる土地開発公社は市と一体の特別法人。川西市の取り組みを知るにつけ、学ぶべき点は多いと思われる。奈良市も資金調達の課題を一度は整理し、市民との共有化を進める必要があるのではと考えた。
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