地域の身近な問題を掘り下げて取材しています
拠点・奈良県大和郡山市 運営者・浅野善一

撮影料金、情報発信目的なら請求せず

奈良公園 テレビや出版を対象に県

条例の運用見直す、PRの機会増を期待

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2011年4月13日
多くの観光客が訪れる奈良公園の春日野園地。情報発信が目的の撮影なら料金が不要に=奈良市雑司町
 県は、奈良公園(奈良市)で旅番組や旅行雑誌が情報発信を目的に行う撮影に対し、使用料を請求するのをやめた。県立都市公園条例の運用を見直し、奈良公園撮影の内規を新たに設けた。県はPRの機会が増え、観光客誘致につながることを期待している。使用料に対してはこうした撮影の関係者から不満の声もあった。
 奈良公園は県内に11カ所ある県立都市公園の一つ。県立都市公園条例は管理を目的に、公園での許可が必要な行為やその際の使用料を定めている。このうち撮影に関しては、写真が1日1100円で記念撮影の業者を主な対象とした1年契約は1万1900円または1万4300円。映画は1日1万3100円でテレビもこれに準じている。個人が趣味などで撮影する場合は含まれない。
 県奈良公園管理事務所によると、使用料が不要と判断した撮影行為は、テレビでは旅を扱う情報報番組など、出版では旅行雑誌など。ほかに旅行のポスターやパンフレットも。該当するのは観光客誘致につながるものという。併せてこれらの撮影の申請手続きも許可制から届け出制に改め、迅速に対応できるようにした。ただ、テレビでもドラマなど撮影のために一定の場所を占用してしまうものは従来通り許可と使用料を必要とする。
 見直しの背景には使用料請求の基準が必ずしも明確でなかったことがある。同条例が制定されたのは1960年。当時、奈良公園で撮影といえば、映画ロケか修学旅行などの団体旅行記念写真や結婚記念写真が主だったという。ところが最近は、当初から使用料の対象外だった新聞やテレビの報道との間で線を引くのが難しいケースが増えてきた。対応する職員の裁量に任される部分があって判断が一様にならないことがあった。情報番組や旅行雑誌の関係者からもPRにつながるのになぜ使用料をとるのか、といった不満の声もあったという。
 新しい基準は昨年4月から運用されている。これに伴って使用料収入は減っており、写真は運用前の2009年度が約22万円なのに対し運用後の10年度が9万円。テレビ・映画は09年度が約100万円なのに対し10年度が15万円となった。
 同管理事務所の高岡茂課長は「使用料を不要とすることで2010年の平城遷都1300年祭開催をPRする機会になるという期待もあった。多くのメディアに取り上げてもらったら広告の費用も必要ない。費用対効果は大きい」と話している。
 一方、生駒市のエヌ・アイ・プランニングが県内で発行している「タウン情報ぱーぷる」の山下雅央・編集長代理は「全国的に見ても奈良は観光資源が豊か。奈良といえばすぐに大仏や奈良公園の鹿をイメージしてもらえる。奈良公園は魅力ある観光資源の一つ。撮影のための使用料が無料になればわれわれも情報発信しやすくなり、観光PRのお手伝いをしやすくなる」と歓迎している。
 県内では有名社寺などで掲載料などを設定している例がある。多くの史跡を抱える明日香村では、村が管理している史跡を撮影する場合、許可が必要だが、料金は請求していない。(浅野善一)
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