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拠点・奈良県奈良市 運営者・浅野善一

最低制限価格落札が急増

県土木事務所、業務補助委託の指名競争入札

談合情報で県外業者の営業所加え

メール
2011年6月8日
土木技術業務補助委託の
入札結果
(開札録をもとに作成)
奈良土木事務所↓
郡山土木事務所↓
高田土木事務所↓
桜井土木事務所↓
宇陀土木事務所↓
五條土木事務所↓
吉野土木事務所↓
本課分↓
 団塊の世代の退職で人手不足になった土木事務所などの補助業務を建設コンサルタント業者に委託する、県の土木技術業務補助委託事業の指名競争入札で昨年4月、談合情報があった。県がこれを受けて、指名対象をそれまでの県内本店の業者のみとするのを改め、県外業者の県内営業所を加えたところ、高かった落札率が下がり、最低制限価格による落札が急増したことが、「ニュース奈良の声」の調べで分かった。
▼団塊の世代退職、人手不足補う
 同委託事業は、出先の土木事務所内や庁内の土木部関係の課内の土木技術業務の補助を、業者の従業員に来てもらいしてもらうもの。団塊の世代の県職員の大量退職に伴う土木技術職員の不足を補うため、緊急避難措置として2008年度に制度ができた。土木工事の設計を主な業務とする建設コンサルタント業者を指名の対象にしている。
 県が公開している開札録によると、一昨年10月22日からことし4月18日までの1年半の間に105件の入札があった。1件当たりの委託期間は1〜8カ月、委託金額は予定価格で100万円台〜900万円台。指名業者は10〜20業者の前後だった。
 こうした予定価格1000万円未満の技術的に容易とされる業務補助の委託は、県の建設コンサルタント業務の発注基準に基づき、原則として県内本店の業者による指名競争入札で行われているが、県内営業所を加えることも可能としている。入札額上限の予定価格と下限の最低制限価格は事前に公表されている。
 県公共工事契約課によると、談合情報は奈良土木事務所で4月にあった入札のうち1件について、事前に県広報広聴課にファクスで寄せられ、落札業者と落札金額ともに情報通りの結果となった。同課は取材に対し「疑いの次元」としてこれ以上を明らかにしないが、開札録によると、同土木事務所では同月15日に3件の入札があった。いずれも県内本店の15業者を同一の組み合わせで指名。予定価格672万〜732万9000円に対し、640万5000〜679万3500円で落札した。予定価格に対する落札金額の比率である落札率は92.7〜95.3%と高かった。
 同課は指名業者から聴取したが、業者は談合を否定。裏付けは得られなかったが疑わしいと判断し、公正取引委員会に事実関係を報告した。併せて翌5月、指名業者の組み合わせが固定されるのを避け、競争性を高める狙いで、県外業者の県内営業所も加えるよう、奈良、郡山、高田、桜井、宇陀、五條、吉野の7土木事務所と庁内の関係課に対し連絡した。入札は談合防止のため、業者が顔を合わせる機会がなく、顔ぶれが分からない電子入札だが、県内本店の業者のみだと数が限られ、話し合いも可能とみた。県の建設コンサルタントの入札参加資格登録をしている県内本店の業者は21。これに対し県内営業所は131ある。
 これを境に奈良土木事務所では、業務補助委託の入札の落札率が大きく変化した。昨年9月24日からことし4月14日までの10件のうち9件が最低制限価格による落札だった。一方、県内営業所を加える前の入札では、談合情報があった昨年4月15日の3件だけでなく、一昨年11月19日と12月10日の2件も落札率が94.8〜94.9%と高かった。
 こうした傾向が顕著なのは他に高田、桜井、吉野の3土木事務所。高田では昨年5月24日からことし3月25日までの15件のうち、7件が最低制限価格による落札だった。このほかの5件も落札率が80%台前半で、談合情報があった昨年4月までの5件の92.9〜94.9%に比べると低くなった。桜井では昨年8月26日からことし4月18日までの8件のうち、7件が最低制限価格による落札。談合情報があった4月までの7件は89.1〜94.3%だった。吉野では昨年10月5日からことし3月23日までの13件のうち10件が最低制限価格。談合情報があった昨年4月までの7件は88.8〜93.6%だった。
 「奈良の声」が調べた105件の入札のうち、談合情報があった昨年4月までの入札は36件で、このうち最低制限価格による落札は4件で約1割に過ぎなかった。一方、県内営業所を加えるようにした昨年5月以降の入札は69件で、このうち最低制限価格による落札は48件で約7割に上る。
 県公共工事契約課は「結果の分析にまでは至っていない。元々、黒とまでは言えず、落札額が下がったことがいいかどうか議論があるが、談合防止の効果はあった」とする。
 県内の業界関係者はこうした疑惑に対し、「土木技術業務補助委託の入札は業者が談合に走りやすい」と指摘する。技術職員を補助する仕事は、しばしば談合事件の舞台となる下水道管理業務の委託と同様、実績や連続性が重視される。一方、送り出された従業員は社に戻っても仕事がなく、業者としては継続的に請け負いたいと考えるためという。
 県内本店の業者でつくる県建設コンサルタント協会は取材に対し、談合を否定した。その根拠として「落札すれば、社にとって主軸になる人材を送り込むことになる。いい人材はコストも高い。入札では皆、高め高めに入れる。だから落札率も高くなる。これに対し、県内営業所を持つ県外大手は規模が違い、人材が多い。落札したいときは低い入札額でもとりにいく。だから、県内営業所が入れば落札率も下がる」と説明。さらに「独占禁止法をテーマにした講習会を年1回開くなど、談合をなくす努力をしている。また、コンプライアンス(法令順守)を前面に掲げる会員企業もあり、談合が発覚すればペナルティーや賠償で倒産があることも自覚している。談合を行えるような状況ではない」とも強調する。(浅野善一)
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