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拠点・奈良県奈良市 運営者・浅野善一

選択式の弁当給食、利用率低く

制度導入の県内中学校

周り気にして控える生徒も

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2011年7月15日
中学校給食の配食弁当の利用率
奈良市 2%(2010年度)
大和郡山市 0.7%(2010年度)
香芝市 2%台(2009年度)
 県内の一部の中学校で導入されている、家庭の弁当か配食弁当かを選べる選択式の給食制度。学校給食を望む保護者の声などを受けて、市部では2004年から導入が始まったが、どこも利用率は低い。好き嫌いや利用する際の手間の問題もあるが、利用者が少ないために、生徒が周りを気にして利用を控えてしまうこともあるようだ。
 同制度は、教育委員会が委託した業者の配食弁当を購入するもの。献立は教育委員会が作成する。生徒は前日か当日朝までに、学校を通じて注文する。業者は注文数に応じて弁当を製造、学校に配達する。学校には温蔵庫や保冷庫を備えた配膳室が設けられている。
 県内市部で選択式の給食制度を実施しているのは奈良、大和郡山、香芝の3市。奈良・大和郡山は2006年度から、香芝は04年度から導入している。一食の価格は奈良が400円、大和郡山が350円、香芝が390円。
 奈良は全21校中、給食を実施していない16校のうちの11校で実施。導入が2校のみだった06年度の利用率は14%だったが、減少が続き、10年度は2%。大和郡山は全5校で実施。利用率は09年度が0.94%、10年度が0.7%といずれも1%に満たなかった。香芝は全4校で実施。06年度の利用率は4%台だったが、減少が続き、09年度は2%台。10年度は若干、増加に転じる見通しという。
 奈良市教委はこの5月から6月にかけ、給食を実施していない学校の生徒、保護者、教職員を対象に給食に関するアンケート調査を実施した。家庭の弁当を毎日持参する生徒は89%を占めた。一方、毎日は持参しないとした11%の生徒にその理由を尋ねたところ、「作る人が大変だから」が41%を占めた。しかし、こうした生徒が昼食で利用するのは、学校購買部のパン(41%、設置校のみが回答)や通学途中のコンビニエンスストアなど(29%)で、配食弁当は9%(導入校のみが回答)とわずかだった。
 また、制度を導入している学校の生徒に、配食弁当を利用したことがあるかどうか尋ねたところ、75%が「ほとんど利用しない」と答えた。利用しない理由は「必要がないから」が50%を占めたが、残る50%には「(配膳室での)受け取りが面倒だから」「予約が面倒だから」「好きなものが食べられない」「嫌いなものが多い」「量が多い」など利用を避けている理由が並び、「他の人もあまり利用していないから」も7%あった。
 同市の中学校に通う生徒の1人は、配食弁当の利用を控えがちになる理由として次のような点を挙げる。
 それによると、昼食時に配膳室の前に並ぶのは、多いときでも全校で8人くらい。このため配食弁当を食べていると目立ち、他の生徒から、からかわれることがあるという。また、汁物の容器は走るとこぼれやすく、急いで教室に戻れない。にもかかわらず、教室では「いただきます」を合図に一斉に食事を始めることになっているため、教室が配膳室から遠く、往復に時間がかかってしまうと、他の生徒を待たせたり、昼食時間を短くしたりすることになり、教室内で不満をぶつけられることがあるという。
 市教委保健給食課に対し、この件について取材した。同課は、当該の学校に確認した結果として「からかわれた事象はない」「弁当給食の配膳がスムーズであり、注文した生徒が昼食時間に遅れてくるようなことはない」とし、生徒が話すような事実は否定した。一方、同課は利用率が低い理由について「家庭の弁当を毎日持参する生徒が約9割いて、弁当の需要の絶対数が少ないため」とした。
 他府県でも状況は似ている。大阪府高槻市は1食の価格が340円だが、この5月の利用率は1.6%。市教委保健給食課の担当者は「保護者には好評だが、事前の予約や当日の受け取り、容器の返却といった手間が生徒には不評」とし、さらに「生徒には、1人だけ弁当給食で注目の的になるのは嫌という、心理もあるかもしれない」と説明。兵庫県姫路市でも導入前、「保護者から、弁当給食の生徒が注目されて、からかわれることはないかと不安の声があった」(市教委学事・保健課)という。同市の1食の価格は食材費分のみの300円。調理・配送費は市が負担している。この6月の利用率は18.8%だった。
 こうしたことから高槻市では、利用しやすい環境づくりのため、生徒が好きな献立の日を選んで、学級全体で弁当給食を食べる、スクールランチデーを設ける教員もいるという。奈良市でも学校によっては「弁当給食の日」を月1回、学級単位で設けているところがあるという。
 生徒の成長や健康を考えた制度である。子育て支援の側面も持つ。生徒が周りを気にしなくても済むよう環境づくりを進めれば、わずかかもしれないが利用率は高まるのではないか。(浅野善一)
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