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拠点・奈良県奈良市 運営者・浅野善一

なぜ匿名 関与の市上層部や市議

奈良市土地開発公社の巨額損失 責任問えぬ

買い取り経緯の調査報告書

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2011年8月24日
西ふれあい広場建設事業の土地取得について、市議の圧力を指摘した部分(奈良市土地開発公経営社検討委員会報告書から)
 200億円近い含み損を抱える奈良市土地開発公社の保有地。その土地取得の経緯を調査した同公社経営検討委員会(委員長・出水順弁護士、5人)がことし3月に公表した報告書は、必要性の低い土地を高額で買い取っていたことなどを指摘したが、関与した市上層部や市議らを匿名とした。一方で、こうした関係者について「法的責任を問うことは時間の経過などから困難だが、政治的責任は免れない」ともしている。しかし、匿名ではその政治的責任さえ問えない。この巨額の損失の処理は税金で行われる。つまり、市民の負担となる。市は実名を公表して説明する責任があるのではないか。23日、担当の市行政経営課に考えを聞いた。
 検討委は公社が取得した土地のうち、1990年から2000年にかけて進められた西ふれあい広場建設事業(二名)、公園建設事業(奈良阪町)、JR奈良駅周辺地区整備事業、体育施設整備事業(横井町)、中ノ川造成事業(中ノ川町など)の5件について調査。当時から現在までの市長・助役(副市長)10人、元担当職員12人などを対象に聞き取りを行った。
 その結果、大半の土地について、必要性の検討もないまま買い取りありきで高額取得していた可能性がある、と結論づけた。背景には市議や団体の圧力があり、市上層部は円滑な市政運営を考慮して圧力を容認していた、とした。
 取材には川本了造課長が応じた。一問一答は次の通り。
 ―報告書を匿名にした理由は。
 「匿名を条件に関係者から聞き取りを行った。調査の目的は事実関係を明らかにするためで、犯人捜しではない。検討委から提出を受けた報告書が、市が持っている情報の全て。市の公文書としても、これ以上のものはない」
 ―匿名にすることを決めたのは誰か。
 「検討委が決めた。職員は聞き取りに関わっていない。市から匿名を依頼したわけではない。匿名が前提でないと関係者は口をつぐみ、証言は得られなかっただろう」
 ―誰が、というのは事実関係の中で重要な要素。特に公職者については匿名にする理由がないのではないか。
 「実名を公表すべきという指摘はよく分かる。しかし、匿名を前提に証言を得ており、その前提を覆すことはできない。実名を公表するなら、裏付けの証拠を集めなければならない。警察のような捜査機関ではない市にそれはできない。名誉毀損(きそん)で逆に訴えられる恐れがある」
 ―匿名では政治的責任さえ問えない。
 「指摘はよく分かる。しかし、公社が抱える含み損は市の借金に等しく、これをどうするのかが一番の問題。また、圧力に屈せず、今後、二度とこのようなことが起こらないよう体制を整えなければならない。損害賠償を求めるべきではとの市議の声もあったが、時間が経過し、証拠が散逸している。圧力や強要を証明するには証拠が必要で、違法性を問うのは難しい」
 ―巨額の損失の処理は税金で行われる。市民の理解を得るのに、実名によって責任の所在を明確にすべきではないか。
 「土地開発公社解散の際には、あらためて市民に対し説明する責任があると考えている」

「指摘もっともだが、公表は約束違反になる」 検討委の出水委員長

 24日、検討委の出水順委員長にも電話取材した。出水委員長は「実名を公表すべきという指摘はもっともだ。しかし、かなり短期間に報告書をまとめなければならなかったうえ、聞き取りは任意であり強制力もない。不都合なことは言わない恐れもある。このため聞き取りの際には、責任追及に視点があるわけではない、本当のことが知りたいだけだから、と説明した。聞いてみると、買い取りに問題があることも分かったが、こうした経緯から実名公表は約束違反になり、難しい」とした。
(浅野善一)
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