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拠点・奈良県奈良市 運営者・浅野善一

三条通にもマンション

映画館、銀行の跡地 2カ所で相次ぎ建設へ

地元商店街は1階に店舗要望

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2011年8月30日
マンションが建設される三条通りのシネマデプト友楽跡地=奈良市角振新屋町
マンションが建設される三条通りの奈良銀行跡地=奈良市下三条町
 奈良市を代表する目抜き通り、三条通りに分譲マンションが相次いで建設される。映画館の跡地と銀行の跡地の2カ所で、商業施設が中心の同通りでマンションは初めてとなる。いずれも地元商店街の要望で、1階の通りに面した部分には小規模な店舗1戸がかろうじて入る。「人口増は望ましい」との声もある。とはいえ、春日大社に続く門前の通りとして、観光客や買い物客を集めてきた三条通りの性格は変わろうとしている。
 それぞれの建設現場に掲げてある開発事業公開標識によると、昨年閉館した同市角振新屋町の映画館「シネマデプト友楽」の跡地では、京阪電鉄不動産(大阪市)が約2400平方メートルの敷地に7階建て80戸のマンションを建てる。高さは、市が定める制限20メートルに対し19.945メートル。また、2003年に営業を終了した同市下三条町の奈良銀行本店跡地では、大和ハウス工業(大阪市)が約1600平方メートルの敷地に8階建て56戸のマンションを建てる。高さは、同制限25メートルに対し24.99メートル。完成はいずれも13年3月を予定している。
 地元商店街のほか、京阪電鉄不動産の窓口となっている長谷工コーポレーション(大阪市)、大和ハウス工業の窓口となっているエージィーエステート(大阪市)、奈良市に取材した。
 それによると、2カ所ともに当初の計画では、建物は住居のみだった。これに対し、友楽跡地では、近鉄奈良駅周辺の商店街組織の代表者でつくる市中心市街地活性化研究会(松森重博会長)が要望して、10坪程度(約33平方メートル)の店舗1戸が設けられることになった。同研究会は「メーンストリートへの親和性が必要。道路に面した所が壁のようになっては困る」と話す。
 このほか、通りにむき出しになるはずだったごみ置き場についても、植栽で目隠しし、収集車が敷地内に入って積み込み作業を行えるように変更される。駐車場の収容台数も当初は戸数の70%分が予定されていたが、車の出入りの数を減らしてほしいという同研究会の要望で、市の開発指導要綱が求める最低限の50%に抑えられることになった。
 一方、奈良銀行跡地でも、三条通ショッピングモール(松山和央理事長)が要望して、小規模な店舗1戸が設けられることになった。同ショッピングモールは「住居のみでは通りの中でそこだけが無機質なものになってしまう。夜はそこだけ暗くなり、違和感がある」と話す。
 三条通りは、古くから奈良市を代表する通りとして観光客や買い物客に親しまれてきた。JR奈良駅前から猿沢池までだと約1キロ。車は春日大社方面のみの一方通行で、歩道を広くとり、歩行者中心の道路になっている。日曜、祝日は歩行者天国になる。三枝祭(さいくさのまつり、別名ゆりまつり、6月)やバサラ祭り(8月)、采女祭り(9月)、春日若宮おん祭(12月)など、市を代表する多くの行事で、行列の主要なコースにもなっている。
 しかし近年は、スーパーや家電店、旅館など商業施設の撤退、これに伴う空き地や駐車場の増加で、商店街としての機能が低下している。
 三条通ショッピングモールの福田育弘・副理事長は「マンションだから駄目というわけではない。人口が増えるのはうれしい」としながら危惧する点も挙げ、「日曜、祝日、行事の際のマンション住民の車の出入りは安全性確保の点で不安がある。移ってきた住民に三条通りの文化、普通の住宅地とは違うということを理解してもらえればよいが」とした。
 2社に対し、マンションを選択した理由について電話取材した。京阪電鉄不動産は「中心市街地の人口が減る中、人々を呼び込むことで三条通りを活性化させ、よくすることができる」とした。商業施設の選択肢はなかったのか。同社は「建物全部ではないが、一部を商業施設にというのもあったが、いろいろと検討した結果、こういう形になった」とした。大和ハウス工業は「まだ、懸案事項があるため、今すぐコメントは出せない」とした。
 2008年に市が策定した市中心市街地活性化基本計画は、三条通りを「奈良のシンボルロード」と位置付け、歩行者優先の道路整備や商業施設の強化をうたっている。現在、市により三条通りの道路拡幅工事も進められている。同時に、中心市街地の人口減に対応して「街なか居住」推進の必要性も指摘してはいるものの、計画策定当初に、三条通りから友楽がなくなって、跡にマンションが進出するような事態までは「想定していなかった」(平田公一・市商工労政課長)。
 これによって今後、検討課題となる点は何か。一つはマンションの駐車場の問題。現在の市の開発指導要綱では、一定規模のマンションには少なくとも戸数の50%分の収容台数が一律に求められる。これを地区によって必要台数の基準を下げるなど柔軟に対応できるよう見直しては、との意見もある。また、建物の通りに面した部分に一定規模の商業施設を確保するよう義務づける、地区計画を定める方法を挙げる意見もある。ただ、地区内の100%の同意が必要で「容易ではない」(同課長)。
 今回の相次ぐマンション進出について、三条通ショッピングモールの福田副理事長の受け止め方は厳しい。「三条通りに商業施設が来ないのには理由がある。頑張ってはいるが、商店街としての魅力を高めていたら来てもらえるのだろう」とする。また、市中心市街地活性化研究会の松森会長は「三条通りがコンクリートの連続では良くない。しかし、地元だけで対応するのは限界。どんなまちにするのか、行政によるまちづくりプランが大事」と訴える。(浅野善一)
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