地域の身近な問題を掘り下げて取材しています
拠点・奈良県大和郡山市 運営者・浅野善一

全県立高校に 奈良を学ぶ科目 13年度から

伝統・歴史・文学・自然 魅力発信できる人材育って

メール
2011年11月1日
 県教育委員会は、全ての県立高校を対象に、県の伝統や歴史、文学、自然など、郷土について全般的に学ぶ独自の科目を設定することを決めた。県の良さを発信できる人材を育てることなどが狙い。2013年度から実施する。同教委学校教育課に取材した。
 県立高校では、05年度に開設された西の京高校地(奈良市)域創生コース(1学年40人)と法隆寺国際高校(斑鳩町)歴史文化科(1学年40人)で、日本史の授業時間数を増やして、県の歴史についてより深く学ぶ授業を行ってきた。こうした郷土について学ぶ授業を、全県立高校に広げようという。県教委は、ことし8月に全校の関係者を集めて説明会を開いた。県教委は、教員が指導するための資料を、12年度夏までに完成させる。
 全生徒の必修とし、授業は週1時間で1年間、計35時間とする。どの学年で実施してもよく、学校が独自に設定できる学校設定教科科目として実施するか、または総合的な学習の時間を充てるかは、学校の事情に合わせて選択すればよいという。日本史や国語など従来の教科科目の中に取り入れる方法でも、授業時間が計35時間になればよい。
 実施にあたっては、歴史だけでなく、領域を広げて、県の良さを全般的に学べるものにしたいという。また、全ての高校が同じ内容の授業をするわけではなく、それぞれの高校がある地域の特色も反映させたものになるだろうという。
 奥田智・県教委学校教育課係長は狙いについて「10年度に開催された平城遷都1300年祭では、奈良の魅力を発信できた。この成果を引き継ぐためには、奈良のことを理解できている人材を育てていく必要がある。また、13年度から実施される高等学校学習指導要領(改訂)は、教育基本法が定めた、国や地域に愛情を持つ人材の育成を求めている」としている。
 全国の同様の例では、東京都教育委員会が12年度から全ての都立高校で日本史を必修化し、独自の日本史科目「江戸から東京へ」を設定する。(浅野善一)

寺のボランティアや観光行事の実行委員に 西の京高校

 郷土について学んだ生徒には、どんな変化が見られるのだろうか。先行例として、地域創生コースのある西の京高校に聞いた。
 同コースには、独自の学校設定科目として「奈良の歴史と現状」「観光学入門」「地域学入門」があり、日本史と関連させながら郷土に対する興味、愛着を育てる授業を展開している。
 同コース運営部長の池田憲彦教諭によると、特に文化史学習が効果があるという。生徒は県の美術史や文学史、社寺、仏像について学ぶことで、郷土の魅力に気付き、理解を深めるという。地域への関心が表れている例としては、授業で参加した活動を継続する生徒の存在を挙げる。近くの薬師寺の青年ボランティア組織に自発的に参加し、寺の行事や朝の掃き清めを手伝う生徒や、奈良市内の観光行事「平城京天平祭」(昨年まで平城京遷都祭)の実行委員になった卒業生は、地域を支える役割を担っているという。
 池田教諭は「長い目で見ていかなかればならない。生徒が将来、何かの地域活動ができたら、それは成果」と話している。 (2011年11月4日)
ご寄付のお願い
 ニュース「奈良の声」は、市民の皆さんの目となり、身近な問題を掘り下げる取材に努めています。活動へのご支援をお願いいたします。
 振込先は次の二つがあります。
ニュース「奈良の声」をフォロー
  Facebook
当サイトについて
 当局からの発表に依存しなくても伝えられるニュースがあります。そうした考えのもと当サイトを開設しました。(2010年5月12日)