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拠点・奈良県奈良市 運営者・浅野善一

奈良県)ドブ川にも名前があることを高校生の研究で知る

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2013年2月23日 浅野詠子

 【視点】記者の自宅近く、ほとんど地元の人しか通らない細い道に沿って、延長1.5キロのどぶ川のような水路がある。それに乾(いぬい)川というれっきとした名前があることを知った。今月9日、地元の奈良県立西の京高校・地域創生コース2年生が地域の課題を研究し成果を発表したが、この河川を取り上げた班があったのだ。同校生徒247人にその印象を聞いており、51%が「汚い」、27%が「とても汚い」と回答している。

 乾川は、万葉の「勝間田の池」ともされる大池(同市七条2丁目)のすぐ北側を通り、世界遺産の薬師寺の南を流れて秋篠川と合流する。担当した6人の生徒は、5メートルのロープを伝って川に下り、落ちているたくさんのごみを拾った。普段、目にしても、コンクリート護岸が急勾配のため容易に近づけない河川である。よりよい環境に向け「地域住民の協力が不可欠」と高校生のレポートは訴える。

 今はやりの親水性は低いものの、まず地域の人々に存在を知らせるという意味でも、高校生の取り組みは有意義だったと思う。乾川については県が2001年度、大和川水系・平城圏域の河川整備計画策定に伴い調査をしたが、「生活排水の流入により汚い」と断じた(問題となる生活排水は一般的に、浄化槽や下水道を経由せずそのまま河川に排出される台所、風呂場、洗濯の汚水)。その後、10年余りを経て実施されたこの高校生の研究では、残念ながら環境面での進歩はあまり見られず、ごみの投棄や近隣の住宅から流れ込む排水の問題が指摘された。

 当時の河川整備計画では、乾川流域の公共下水道の促進が必要と指摘しており、普及率を県と奈良市に尋ねたが、流域別のデータはないという。奈良市全体では下水道の普及率は91%に達しているが、高校生が投げかけた汚れの問題は重い課題だ。一方、下水道はまちづくりの万能薬ではないらしく、「都市から水を奪いつつある」という中西準子氏の指摘(著書「都市の再生と下水道」)もある。奈良らしい河川づくりへの熟議が求められる。

 記者は1年ほど前から、乾川に沿った道を自転車でよく通る。確かに水底はぬめぬめとして汚いが、大池の堰堤(えんてい)付近から砂利道になり、新鮮で面白く感じられる。一度だけだが、昨年の7月ごろにはカワセミを見かけた。フナかオイカワか何かの小魚が悠然と動くさまも見た。01年度の県調査ではコイや金魚しかいなとされていたので、何かの変化があるのだろうか。

 間違っても、万葉の率川を暗渠(あんきょ)にしてしまった奈良町のようなことがあってはならないと思う。

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