奈良県:平城宮跡整備で説明会 国交省、広場舗装の方針変えず 反対の市民、埋蔵文化財への影響懸念
奈良市の平城宮跡(特別史跡)で国土交通省が進めている復元整備について、同省国営飛鳥歴史公園事務所は15日、同市上三条町の市中部公民館で、市民らを対象に説明会を開いた。朝堂院広場の舗装計画について、埋蔵文化財を守っている地下水への影響を危惧する市民に対し、同事務所は「地下水への影響はない」として、広場舗装の方針に変わりがないことをあらためて示した。
説明会は、舗装に反対している「平城宮跡を守る会」(寮美千子代表)の申し入れを受けて開かれたもので、市民ら約50人が参加した。開催は昨年11月に続いて2度目。
舗装が計画されているのは、復元された大極殿と朱雀門の間にある朝堂院広場約4万5000平方メートル。従来は草地だった。すでに盛り土工事が完了しており、同省は今後、表面を土系の素材で舗装する予定をしている。セメントを重量比で4%混ぜた真砂土をつき固めるものという。
大石智弘所長は説明で、宮跡全体の地下を北から南に流れる水脈があり、舗装によって雨水の浸透が少し少なくなっても地下水の水位に影響はないとした。同事務所は昨年4月から月1度、広場の2カ所で水位を観測しており、昨年12月から今年3月に行われた盛り土工事では、水位に変化はなかったとした。
これに対し、元国交省職員という参加者は「経験上、土系舗装に透水性は全くない」と指摘し、地下水への影響を懸念。また、別の参加者は「舗装工事の前にまず試験を行い、透水性の基準を設けるべき」と求めた。「守る会」の寮代表も「地下水の水位が下がったときの対策は」とただした。
大石所長は「広場の地下水の水位のモニタリング(監視)を続け、何かあれば対応することになる」と答えた。水位の低下は想定してないとしたが、対策としては浸透ますの設置などを挙げた。透水性試験については、より適した素材を使うため土の配合試験などを行うとの考えを示した。
同事務所によると、現在の広場の地下水の水位は地表から20~30センチの辺りという。
会場からは同省が進める復元整備の促進を求める発言もあった。
舗装工事は当初の計画では昨年度中に完了する予定だったが、入札に不備があったとして、今年度以降に持ち越され、あらためて9月27日に公告された。しかし、これも入札参加を希望した業者がいずれも要件を満たさなかったことから不調に終わった。このため同省は12月6日、入札を再公告。開札は来年2月ごろの予定という。