奈良県:奈良・三条通りマンション進出に対応、店舗の設置義務付け 間口の1/2以上、市が地区計画変更へ
古都・奈良市の目抜き通り、三条通りへのマンション進出に対応し、店舗の設置を義務付ける地区計画変更の手続きを、市が進めていることが分かった。三条通りでは、店舗撤退後にマンションへと建て替えられる事例が続いており、商店街関係者は危機感を募らせている。
地区計画は、都市計画法に基づき住民参加型で一定の街並みを保全できる制度で、三条通りには1997年に作られた三条通地区地区計画がある。JR奈良駅前から猿沢池手前までの約1キロが対象だが、建物の意匠については、1階の通りに面した部分の壁面はショーウインドーや透視可能なシャッター構造など、にぎわいを高める構造に努める、という抽象的な努力義務にとどまっていて、規模などの具体的な規定もない。
一方、三条通りでは2013年以降、通りで初めてとなるマンションが、映画館「シネマデプト友楽」跡地や奈良銀行本店跡地に相次いで完成した。いずれのマンションも、当初の計画は分譲の住居のみだった。地元の商店街組織の要望で、ようやく店舗が設けられた経緯がある。こうした問題を受けて、住民組織の三条通りまちづくり協議会(末広隆会長)は、市に地区計画の変更を提案した。
変更案は、マンション1階の通りに面した部分について、間口の2分の1以上を店舗や飲食店などに充てることを義務付けている。通りに面した部分の敷地の幅が10メートル未満の場合には、緩和措置も設けられている。
変更の手続きは、原案の縦覧がこのほど終了。今後、市の都市計画審議会への諮問や知事との協議、都市計画決定を経て、「市地区計画の区域内における建築物の制限に関する条例」の改正を目指す。
シネマデプト友楽跡地のマンションの店舗は間口いっぱいに設けられた。現在、土産物店が営業をしており、観光客などでにぎわっている。一方、奈良銀行本店跡地のマンションの場合は、間口の一部に店舗を設け、その横の壁面にショーウインドーを配置したものにとどまった。すでに完成しているマンションに対しては、条例が改正されても義務は課されない。
三条通りでは、新たに油阪地方町の旅館跡地でマンションの建設が予定されている。市都市計画課によると、市との間で開発の事前協議が始まっているが、現行の地区計画が適用される場合でも新しい地区計画の規定に合わせてもらうよう協力を依頼しているという。
三条通りまちづくり協議会の末広会長は「三条通りにはマンションが建設できるような空き地がまだまだある。早急に条例を改正してもらいたい」と話している。