2014年5月9日 浅野善一

奈良県:平城宮跡、広場舗装近く着工 地下水への影響、国交省「試験で透水性確認」

朝堂院広場で地面をつついていたヒバリ。あちらこちらにシロツメクサの花畑もできていた。舗装されるとこうした光景は見られなくなりそう=2014年5月3日、奈良市佐紀町の平城宮跡

 奈良市の平城宮跡(特別史跡)の緑地の中心部を、建物復元整備の一環として舗装する、国土交通省近畿地方整備局の工事が近く始まる。同整備局国営飛鳥歴史公園事務所が9日、発表した。8月に完了する予定という。舗装に反対する市民が懸念している地下水への影響について、同事務所は「試験の結果、透水性が良いことを確認できた」とした。

 舗装が行われるのは、復元された第一次大極殿と朱雀門の間にある朝堂院広場約4万5000平方メートル。従来は草地だった。これまでに盛り土工事が完了しており、舗装工事では路盤となる砕石を敷いた上で、表面を真砂土に重量比でセメント4%を混ぜた素材で覆い、転圧する。路盤の厚さ、表面の土の厚さはともに10センチになる。

 「平城宮跡を守る会」(寮美千子代表)は、地下水によって守られてきた木簡など埋蔵文化財への影響や、緑地減少による宮跡全体の生態系への影響が懸念されるとして、舗装工事の中止を求めていた。また、透水性試験の実施を求めていた。

 同事務所の発表によると、使用する真砂土は県内の御所市と平群町で産出されるもの。実際の舗装と同じ条件で実施した室内透水試験で、透水性を示す透水係数は6.4×1/10の3乗~1.6×1/10の2乗センチ毎秒だったという。日本工業規格で透水性が良いとされる数値で、砂と同程度という。

 舗装工事は当初の計画では2012年度中に完了する予定だったが、反対運動が展開される中、入札の不備や不調を理由に延期され、工事契約はことし2月にずれ込んでいた。舗装工事の費用は1億3683万円。

 同事務所はこの日、第一次大極殿を囲んでいた築地回廊の基壇整備に着手することも発表した。回廊は南北319メートル、東西177メートルに及び、正面には重層の門と二つの楼閣があったとされる。復元が計画されており、基壇整備はその一環。今回は回廊の南東部分の基壇を南北40メートル、東西100メートルにわたって復元する。発掘調査で出土した石材と同じ流紋岩質溶結凝灰岩を使用するという。完成は8月の予定。整備費用は8942万円。

 築地回廊の復元は、平城宮跡の建物復元整備で今後、最大の事業となり、費用は数百億円に上るとみられている。建物の規模が大きいことから、市民が慣れ親しんできた平城宮跡の従来の景観が大きく変わることも予想される。

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