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拠点・奈良県奈良市 運営者・浅野善一

〈視点〉宙づりのアオサギ、救護は

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2011年5月28日 浅野善一
 大和高田市内のため池で1年ほど前、アオサギとみられる鳥が水面近くの縦横に張り巡らされた糸に羽を絡ませて宙づりになり、もがいている光景に出くわした。糸は池で養殖している魚を鳥から守るためのもので、少し離れた所では別のサギのものとみられる羽だけが糸に絡んでいた。痛ましく思えたので、野生動物の保護を目的とした救護の対応がないか、現地から高田警察署と大和高田市役所に携帯電話で問い合わせてみた。岸から離れた場所のため、船でもなければサギに絡んだ糸を外せない。しかし、両者とも対応はしていないとの返事だった。忍びなかったが、諦めてその場を後にした。
 気になり、今回あらためて県森林整備課鳥獣保護係に取材した。結論から言えば、やはりそうしたことで行政が救護出動するようなことはないということだ。ただ、県民が保護した野生の傷病鳥獣を受け入れている動物病院を、県が紹介する仕組みはあった。
 それによると、県が県獣医師会と委託契約を結んでおり、この仕組みに登録している獣医師の動物病院に持ち込んだ場合、一次治療にかかる初期費用は無料となる。病院は県内に34カ所ある。鳥獣保護法は野生鳥獣の捕獲を禁じているが、傷病鳥獣の保護を目的としてこうした仕組みをつくっている。
 保護件数は年間約200件に上る。2日に1件を超える割合で、県内のどこかで誰かが傷病鳥獣を保護していることになる。決して少なくない数だ。大型の鳥に襲われけがをしたスズメなど鳥類が多く、哺乳類は車にひかれたタヌキなどだが10〜20件と少ない。サギはわずかという。
 同獣医師会に支払われている委託料は年間63万円。一次治療だけで済まず治療を継続した場合、その費用は病院側が負担しており、保護した件数からするとこの額では少ない。「実質、病院のボランティアになっている」(同係)という。
 身動きできなくなるなどした動物を役所が救護するニュースをしばしば目にする。しかし、こうした場合の出動の目的は動物の救護にあるのではでなく、見物人が集まることによって生じる可能性のある事故の原因を取り除くことにあると、同係は説明する。行政に救護のような制度がないのは、自然の営みの中での野生鳥獣の生き死に対しては関与の必要がないとの考え方からという。
 ため池の上に糸を張り巡らせばこのサギのようなことが起きることは予想される。とはいえ、農林水産物を動物から守るための設備は捕獲が目的ではないので、法的問題はない。畑の防護網が絡まって動けなくなったシカが死亡する例もあるという。いずれも被害防止の目的を達成していることになる。生産者にとっては死活問題であろう。宙づりのサギの姿だけを見て語れないことも肝に銘じたい。

犠牲減らす対策は――日本野鳥の会奈良に聞く

 養殖池などの防護設備の犠牲になる野鳥を減らす対策はないのか、日本野鳥の会奈良に聞いた。
 サギ類が養殖池に巡らされた糸に絡まって犠牲になる例は、ほかの小鳥などに比べると多いという。
 会内部でこうした野鳥の問題はたびたび話題になる。果樹園に設けられたスズメよけの防護網で、他の野鳥が犠牲になることもあり、時には見かねて生産者に申し入れることはあるという。
 ただ、生産者が自分の産業を守るために行っていることであり、法に問うことはできない。「気になることではあるが、会としてキャンペーンをしているわけでもなく、どうこうできるようなものでもない。できればやめてほしいと言うぐらい」とする。(2011年6月5日)
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