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拠点・奈良県大和郡山市 運営者・浅野善一

給食費、集金方法の検討必要

中学校への導入で滞納懸念

奈良市教委が認識示す

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2011年9月6日
 中学校での給食実施を目指す奈良市教育委員会は6日までに、市立中学校給食導入検討委員会(会長・菊崎泰枝奈良女子大教授、5人)での「給食費の滞納が懸念される」との議論を受け、従来の学校単位で教員が集金する方法に変わる新たな集金方法の検討が必要との認識を示した。
 同市の市立中学校全22校(1校は小中一貫校)で、給食を実施しているのは6校(同)のみ。09年7月に当選した仲川元庸市長はマニフェストで全中学校での給食実施を掲げた。これを受け、市教委は2013年度の給食実施を目指し、有識者による同検討委に諮問。検討委は、実施方式について自校方式やセンター方式などいずれを採用すべきか検討を進めている。
 給食費の滞納を懸念する声は、市教委が検討委の審議の参考にするため中学校の教職員・保護者を対象に実施したアンケートの結果に表れた。また、検討委の審議の場で市立中学校長会に給食実施への意見を求めた際にも出た。
 このうちアンケートでは教職員の3分の2が給食実施に反対し、主な理由の一つが「給食費徴収の困難が予想される」だった。一方、校長会長の永保雅史・二名中学校長は給食実施への課題として滞納への懸念を真っ先に挙げ、「滞納の集金の機会が多くなるのでは。教師にとって会計事務、集金が大きな負担になっており深刻。徴収できないときは市の責任でやってほしい。小学校給食費の滞納の解決策は、今の制度に任せている限り見つからない。抜本的改革が必要」と訴えた。
 検討委員の一人、今中良紀・市立都祁中学校長もそれまでの審議の中で「このままでの実施は無謀」と意見を述べた。
 市教委の説明によると、同市の給食費は小学校が月3900円、中学校が同4560円。市の給食費の総額は年間約8億3000万円(小学校47校と中学校6校)で、このうち滞納額は約120万円ある。原因は経済的理由だけでなく、保護者が引き落とし用の口座に入金しないケースもある。滞納したまま卒業してしまうこともあるという。こうしたことから、市教委は「保護者への督促が大変」とする。
 給食費の集金が学校単位で行われるのは、同費用が市の公会計とは別の任意の私会計であるため。保護者が給食費として負担しているのは食材費のみで、給食に使われる食材は、市が運営する財団法人の同市学校給食会が一括して購入している。このため、給食費は各学校長が管理し、同会に納めている。
 市が給食費を徴収するには、公会計に移す必要があるという。市教委によると、給食費の滞納は全国的な問題になっており、同費用を公会計に移す緩やかな傾向があるという。市教委保健給食課は「給食費滞納は放っておけない問題。何らかの対策が必要。中学校への給食の導入と並行して検討していく必要がある」としている。(浅野善一)
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