地域の身近な問題を掘り下げて取材しています
拠点・奈良県大和郡山市 運営者・浅野善一

学校徴収金の点検 ほとんどが学校任せ

県内12市 教委による監査、香芝だけ

メール
2012年2月15日
  教委の監査 業者の選定 PTA会費の徴収方法
奈良  × 教材は把握していない。修学旅行は見積もり合わせを過去に指導 把握していない
大和高田  × 見積もり合わせを周知 学校徴収金と同一の口座から引き落とし
大和郡山  × 把握していない 把握していない
天理  × 把握していない 学校徴収金と同一の口座から引き落とし
橿原  × 業者が偏らないよう指示。修学旅行や卒業アルバムは見積もり合わせを指示 学校徴収金と同一の口座から引き落とし
桜井  × 学校の裁量で実施 学校徴収金と一緒に直接集金
五條  × 学校に任せている 学校徴収金と同一の口座から引き落とし
御所  × 学校ごとに異なる 学校ごとに異なる
生駒  × 見積もり合わせを周知 学校徴収金と同一の口座から引き落とし
香芝  ○ 修学旅行費用は一般会計化し、業者選定には地域代表も参加 関与していない
葛城  × 卒業アルバムは1校で見積もり合わせを試み 学校徴収金と一緒に口座引き落としや直接集金
宇陀  × 把握していない 把握していない
 小中学校が児童生徒から集める教材費などの学校徴収金について、県内全12市の教育委員会を対象に、把握・点検しているかどうかを取材したところ、ほとんどの市が学校任せであることが分かった。教委による監査を実施しているのは、香芝だけだった。学校徴収金は、市の会計(公会計)を介さず、直接、業者に支払われることから、形式的には私費会計。通常、市教委の監督の対象とはならない。このため、教材の価格や業者選定、会計処理が適正なのか分かりにくく、不信感を抱く保護者もいる。
 取材は、各市教委の主に学校教育課に行い、電子メールによるアンケートなどで回答を得た。
 学校徴収金として挙げられるのは、ドリルなどの教材費、給食費、修学旅行や卒業アルバムの積立金、PTA会費など。額は自治体や学校によって異なるが、例えば、大和高田市では、小学校が月約6300円、中学校が月約6000円となっている。
 奈良市内の市立中学校2年生の娘がいる母親は、徴収金の額によっては、なぜそれだけ必要なのか疑問に感じることがある。学校から修学旅行の費用が示された際、気になって明細を求めたが、「細かいことは分からない」として説明を聞けなかったという。
 情報開示請求で、この市立中学校の2010年度3学年分の教材使用計画届け出書、徴収金の会計帳簿、伝票の写しを入手した。同じ学校内でありながら、学年ごとに帳簿の付け方が異なり、入金日や支払い日、単価の記載がない形式のものもあった。同市では、各学年の会計担当者が帳簿を作成し、管理者が点検、年度末に校長が決算報告を承認するという。
 12市教委から得た回答では、奈良以外でも同様に、学校に対して教材使用計画の事前の届け出は求めているが、香芝を除いて、学校徴収金の決算報告は求めておらず、教委による監査も実施していなかった。香芝は、08年度に学校徴収金取り扱いの統一基準を示した要項を制定。これにより、教委への決算報告や、教委と保護者による監査を義務付けた。
 各市の回答は、橿原「学校長の責任で点検し、月々、学期ごとに保護者に会計報告と次期徴収金の連絡を行っている」、五條「教委に点検の権利はなく、学校に報告の義務はない」、御所「適正に行うよう指導している」、生駒「各校で適正に行われていると聞いている」などだった。
 桜井は、事前の届け出の際、教材だけでなく対象を広げ、全ての徴収金の項目と額の報告を求めていた。「全校を総合的に見て妥当かどうか確認している」という。
一方、大和郡山は「今後は点検を行うなど、把握に努めたいと考えている」とした。
 業者の選定でも、「把握していない」「学校に任せている」とするところが多かった。奈良、大和郡山、天理、桜井、五條、御所、宇陀の7市がそうだった。一方、大和高田は「見積もり合わせの周知を図っている」、橿原は「業者が偏らないよう指示している」などとした。生駒は見積もり合わせの基準を設け、5万円以上30万円未満は2社、30万円以上は3社とするよう周知している。
 特に高額なものでは、葛城が卒業アルバムについて、小中7校のうち1校で見積もり合わせを試みているとした。残る6校は同一業者が継続して受注しているという。奈良は修学旅行について「3、4社で見積もり合わせを行うよう過去に指導」、橿原は修学旅行、校外学習、卒業アルバムについて「3社以上で見積もり合わせを行うよう指示している」とした。
 ただ、ほとんどの市が、実際に見積もり合わせが行われているかどうかまでは確認していない。
 特徴があるのは香芝で、修学旅行の費用を09年度に一般会計化し、取り扱い基準を定めた。見積もり合わせは市の登録業者で実施、各学校での業者選定では審査委員に保護者や地域の代表者を加えることを規則化した。
 原則では任意加入のPTAの会費については、学校徴収金ととらえるのかどうか、市によって見解が異なった。しかし、半数以上の市で、教材費や給食費と一緒に集金しており、任意でありながら学校徴収金の一部のような扱いになっていることがうかがえた。
 回答では、大和高田など複数の市が「学校徴収金と同一の口座から引き落としている」とした。一方、奈良は「学校とは別組織のため、学校徴収金とは考えていない」としながらも、「事務、運営上、学校徴収金と同一の口座から引き落としているケースはあるかもれない」とした。香芝は「関与していない」とした。(浅野善一)
 学校徴収金は形式的には私費会計だが、性格は公会計に近い。従って、取り扱いに当たっては、透明性や適正さを担保するための仕組みが求められる。香芝市教委の例は見本の一つになりそうだ。
 同市の学校徴収金取り扱い要項は、学校において統一的基準で適正な会計処理を行うことを目的とする。特徴は、教委への予算書提出と決算報告▽費用の徴収や教材の購入の決裁の流れを明確にする収入・支出の各うかがい書の作成▽教委と保護者から成る会計監査員による監査―などだ。全国の先進例も参考にしたという。
 修学旅行費用の一般会計化も、ほかにない試み。業者選定の透明性を高めることなどが狙いだ。一般会計化と同時に設けた取り扱い基準で、見積もり合わせは旅行業の市登録業者2社以上で実施することや、業者選定の審査委員会には、校長ら学校教職員や教委関係者だけでなく、保護者代表や外部代表者(地域の民生委員や学校評議員)を加えることを規則化した。
 香芝市は2001年度に給食費の一般会計化に踏み切っている。児童生徒から徴収した修学旅行費用や給食費はいったん、一般会計に諸収入として組み入れ、市費として支出する。修学旅行費用は市から業者への委託料として扱われる。
 市教委学校教育課の担当者によると、こうした公会計化の目的には、修学旅行であれば、全員参加を行政として保証しようというのもあるという。担当者は「払わない人の分を、払った人の分で賄うのは良くない」とする。
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