徹底した統制に戸惑う 皇太子来県、沿道警備雑観

2011年11月21日 浅野善一
皇太子の乗った車に向かって手を振る人たち=2011年11月21日、奈良市大宮町6丁目の国道369号交差点

 皇太子が第35回全国育樹祭に出席するため、19日から21日まで県に滞在した。警察の警備の形の中に、現代の天皇制像のかけらでもいいから、見ることができないか。沿道の出迎えの人の列に交じってみた。

 21日、奈良市中心市街地の国道369号(大宮通り)沿道には、県警などの多数の私服、制服の警察官の姿があった。

 皇太子の車が、市役所前の同国道東行き車線を通過するのは、午前11時13分の予定。市役所前のバス停で待機しようとしていたら、沿道で警備していた警察官の1人が声を掛けてきた。バスは交通規制でしばらく来ないといい、バスが来るまで、出迎えの人が集まっている、あそこで一緒に待ってほしい、と近くを指さした。歩道の一角に人がたくさん集められていた。

 警察官に「警備上の理由か」と尋ねると、「(沿道で離れた所に人がいると、そのために)一人一人に警察官が付かなければならなくなるので」と答えが返ってきた。徹底ぶりに戸惑いを覚えた。

 皇太子は午後にも、反対側の西行き車線を通過するというので、今度は近くの近鉄新大宮駅前交差点へと移動した。交差点脇の歩道の一角が、緑色のカラーコーンと棒を使って区切られていた。警察が指定した出迎えの場所だ。皇太子の通過時に、通行人を足止めしておくための場所にもなる。警察官が3人ほど付いていた。そこに並んで、予定時刻の午後1時27分を待つことにした。

 通過車線側の歩道には、所々に同様の場所が設けられた。

 記者がいた指定場所に出迎えの人が集まりだすと、拡声器を手にした若い警察官が注意点を説明し始めた。「皆さん、こんにちは。名古屋から来た○○でえす」「きょうはどちらから」「奈良はどこがいいですか」などと、砕けた調子で話す。現場の統制ぶりとは裏腹だ。

 そして、カメラ撮影について、「写真は撮っていただいて結構ですが、きょうは寒いから、手が震えて手ぶれを起こすかもしれません。今のカメラは手ぶれ防止機能が付いていますが、効果がないかもしれません。それよりもご自身の目でしっかりと皇太子殿下のお姿をお見届けしましょう」。

 遠回しに撮影を抑制しようとしている。それは、出迎えの人が一斉に皇太子に向かってカメラを向けることが、失礼になるからという配慮なのか、撮影に夢中になって混乱が起きることを避けるための備えなのか。

 こうも呼び掛けた。「さあ皆さん、手の振り方を練習しておきましょう」「大きく手を振りすぎると、隣の人に当たりますから、気を付けましょう」。場を和ませようとしているようにも聞こえるが、どこか不自然。何か危険な物を手にしていないか確かめようとしているのだろうか。それに、手を振っていたらカメラのシャッターは押せない。

 予定の時刻が近づくと、その場所の出迎えの人の数は30人ほどになった。警察官は付近の通行人に声を掛け、皇太子が通過するまで、ここで待ってほしい、裏道を回ってほしい、などと協力を求めた。足止めされた自転車の男性は、なぜ通れないのかと、不満げに顔をしかめていた。

 指定された場所以外、通過車線側の歩道上から通行人の姿はすっかりなくなった。一方で、出迎えの人たちを囲っていたカラーコーンと棒は、車道側からは見えない所に素早く片付けられた。私服の警察官は、「警備」と書いた黄色の腕章を外してポケットにしまった。制服の警察官などを除けば、沿道から統制を思わせるものが消えた。

 間もなく皇太子の車が現れ、速度を下げて目の前を通過していった。皇太子の目には、自然な出迎えの光景として映っただろうか。

 皇太子の車のあとに、「報道」と書いた随行記者の小型バス2台が続いた。

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