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拠点・奈良県奈良市 運営者・浅野善一

市動かし新聞社に圧力 記事止める

97年 奈良市会議長、最大会派の中心 記者が経験

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2012年2月21日
 奈良市のJR奈良駅前塩漬け土地問題では、市土地開発公社が有力市議だった浅川清一氏(故人)から土地を取得する際、同氏から市に圧力があったのではないかと指摘されている。その土地取得から3年近く後の1997年、記者自ら、同氏の市への影響力を知る経験をした。当時、新聞社の記者として取材した浅川氏の脱法行為を指摘する記事の掲載を、同氏は市を動かして新聞社に圧力をかけ、止めた。浅川氏は当時、議長だった。
                     掲載されなかった当時の記事
 97年11月ごろ、奈良新聞社の奈良市政担当だった私は、浅川氏が市内の市街化調整区域で、「日常生活に必要な物品を販売する店舗」として、市の開発許可を受けた陶磁器店が、実態は許可されない古美術店であることを知り、取材した。
 間もなく、2人いた市助役のうちの1人から急な呼び出しを受けた。その助役は助役室で「浅川さんが記事のことを心配している。出張している大川(靖則)市長=当時=が帰るまで、掲載を待ってほしい」と依頼してきた。浅川氏の脱法行為を指摘する記事を掲載するのに、大川市長の意向を聞かなければならない理由はないため、断った。
 記者への依頼が、助役一人の判断か、市上層部としての判断かは分からなかった。
 この後、編集局の上司から、記事は掲載しないことになった、と聞かされた。上司の話では、助役から奈良新聞社の営業担当の取締役に連絡があったということだった。掲載しない理由については、営業上、奈良市との関係を大切にするためという趣旨の説明を受けた。
 浅川氏は当時、市議会最大の会派だった「交政会」(15人)の中心で、幹事長を務めるなどしていた。この年の6月、取材の半年ほど前に、4度目の議長に就任していた。2002年4月、在任中に亡くなるまで7期議員を務め、議長も通算5期務めるなど、市議会の有力者で、議決に影響を与える立場にあった。
 助役は1994年から98年まで在任、広報が担当の一つだった。また、奈良新聞社にとって、当時、奈良市は有力な広告主だった。
 現在78歳になるこの元助役は、電話での取材に対し、当時のことについて「一切覚えていない」とし、浅川氏からの依頼については「受けたことはない。それほど親しくもなかった」、記者への依頼についても「していない」と認めなかった。
 一方、奈良新聞社の営業担当だった元取締役は「助役から依頼を受けたかどうか覚えていない」としたが、「当時、奈良市とは関係が良かった。浅川さんの問題を書いた記者が、記事が掲載されなかったことに立腹しているという話は、聞いていた」とした。
 〈視点〉助役から呼び出しを受けたとき、用件については何となく察しがついた。それでも、行政当局とは別機関の議会の議員の個人的意向を代弁することに、おかしな感じがした。市は市政運営上、無視できなかったのだろう。一方で、本来、開発行為を監督すべき立場にある市が、脱法行為を指摘した記事を抑えては本末転倒でもあった。
 浅川氏は故人となり、記事の掲載中止からすでに14年が過ぎた。しかし、同氏が議会という公的影響力を背景に、自己に不都合な記事の掲載を止めた事実は、市民に知らされるべきと考えた。
 奈良市の塩漬け土地問題は浅川氏が関係したものだけではないが、解明が不十分なまま、土地の含み損が市民の負担になろうとしている。また、現在、同市では、市議による市人事異動への口利きをめぐり、市議会に政治倫理審査会の設置を請求する署名活動を、市民が展開している。今の課題につながる過去の事実の掘り起こしは必要だ。【続報へ】(浅野善一)

掲載されなかった当時の記事

 (1997年11月13日作成/現状を書いた原稿ではないため、「――」の部分は名称を伏せました)

 奈良市――の市街化調整区域で、浅川清一・同市議会議長が「日常生活に必要な物品を販売する店舗」として市の開発許可を受け、今年6月に開店した陶磁器店が、実態は許可不可能な古美術店であることが分かった。陶磁器はあるが、大半が高額なものといい、店の看板も「古美術」を掲げている。公職者の法を逸脱した行為だけに、市民から批判の声が上がりそうだ。
 都市計画法34条は、開発行為が厳しく制限されている市街化調整区域であっても、周辺住民の日常生活に必要な物品の販売や加工、修理などを行う店舗については例外的に認めている。具体的な許可基準は、機関委任事務で許認可権を持つ奈良市が定めている。
 市は可能な業務について、日本標準産業分類の小売業、飲食店、サービス業を参考にしており、小売業では陶磁器販売のほかに洋品店や食料品店などを許可対象としている。規模も、周辺住民が対象であることから制限があり、建物の延べ床面積は200平方メートル以下としている。
 浅川議長は今年1月31日、開発許可を受けた。市への建築確認申請によると、建物は重量鉄骨造り2階建て、延べ床面積約197平方メートル。市の許可基準は、店舗部分が50%を切らない範囲で住宅の併設を認めており、約80平方メートルが住宅部分となっている。
 現場は――に近い市街化調整区域。店舗部分は1、2階の両方にあり、1階に安価な茶わんや皿もあるが、大半は九谷焼や古伊万里の絵皿、高額なつぼや外国製陶磁器、一刀彫、昔の銃など。2階には仏像や軸、古代中国の美術品などが展示されている。看板や店舗の壁の表示も「古美術」となっている。
 さらに、建物の登記簿によると、延べ床面積も制限を大幅に超える約290平方メートルとなっている。
 これに対し、奈良市開発指導課は「確かに別のものも置いているが、一般的な湯飲みなどを扱っており、本来の目的をまっとうしている。法律の逸脱はない」との見解を示している。延べ床面積については確認していないという。
 浅川議長は「趣味で集めた陶磁器などの古美術品があるので店を開くことにした」と、店舗の目的が古美術販売であることを半ば認めている。
 その上で、「趣旨を施工業者に伝え、申請手続きなどは任せていた。法律的なことは知らなかった。古物商許可証もあり、古美術品を販売できると思った。2階の展示は売買にも応じるが非売品。改めるべきことがあれば検討したい」と釈明している。
 浅川議長は現在6期目。今年6月、4年ぶりに4度目の議長に再選された。
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