不採用理由で虚偽通知、奈良職安に求人者 記者応募のパート2件、本人の照会で判明

2012年9月21日 浅野善一
紹介状の裏にある選考結果通知の見本(厚生労働省作成の「求人申込書の書き方」から)

 記者(51)が本年3月から7月にかけハローワーク奈良(公共職業安定所)の紹介で応募したパート労働4件のうち不採用になった3件について、職安に対し、求人事業者からの不採用理由通知を照会したところ、2件が思い当たらない内容だったため、事実確認を求めた。職安は、いずれの事業者も事実と異なる通知をしたことを認めた、とした。求人者から職安への不採用理由の通知は、職業安定法施行規則に基づくもので保存もされる。職安は記者に対し、事実と異なる部分は削除したと説明した。同職安で不採用理由の照会を求める求職者は1割あるかないかという。

 2件は、愛知県に本社のある企業の生駒市内の事業所と奈良市内の財団法人の求人。いずれも5月に応募した。面接時に履歴書と併せて提出した職安交付の紹介状の裏が、求人者が職安に選考結果を通知する用紙になっていた。

 記入するのは選考結果やその理由。不採用の場合は理由を、業務内容が合わない▽技能・経験・知識の不足▽賃金が折り合わない―など九つの選択肢の中から選ぶようになっている。さらに、採否いずれの場合もその理由を詳しく書いてもらう欄がある。奈良労働局職業安定課によると、様式は全国の公共職業安定所共通。求職者から不採用の理由について照会があれば答えているという。

 生駒市内の事業所は求人票で、勤務は週2―4日、土・日曜、祝日のみも可能とし、経験などは不問としていた。採用人数は5人だった。記者の不採用の理由は「(記者が)週3日勤務希望で、もう少し出勤可能だと良かった」だった。面接の担当者から「アルバイトだが構わないのか」「希望する勤務期間は」「特に土日祝に出勤してほしい」などの質問や要請はあったが、折り合わない点はなく、勤務日数を増やせるかどうかの質問はなかった。この理由だと、求人票の条件とも異なる。

 職安の担当者が確認したところ、同事業所は不採用の理由について「想定した方ではなかった」と説明を変え、事実と異なる通知になったことについて「ついつい書いてしまった。申し訳ない」と弁明したという。同事業所の求人には8月8日までに3人が応募したが、いずれも不採用だったという。

 また、奈良市内の財団法人は求人票で、毎週日曜の勤務で経験などは不問とし、採用人数は1人だった。記者の不採用の理由は「平日も急に出勤いただくことがあるため」だった。しかし、面接の担当者から平日の勤務が可能かどうかの質問はなく、逆に「週1回の勤務しかないが、それで構わないのか」と念を押してきた。

 職安の担当者が確認したところ、同財団法人は経緯について「(記者を)面接した直後に何人かいる従業員の1人が急病で倒れた。当初は週1回勤務で求人を行っていたが、できたらもっと勤務に入ってもらえる人がいいということになり、(記者の)後に面接した人の中にその条件に合ういい人がいたので採用した。申し訳なかった」と説明。事実と異なる通知になったことについて「ばたばたしていたから」と弁明したという。同財団法人の求人には9人が応募し、1人が採用されたという。

 職安の担当者によると、不採用理由で多いのは選択肢の中にある「その他」。詳しく書いてもらう欄に具体的記述があることは少ないという。問題の2件の求人者は、この欄に記入した不採用理由が事実と異なっていた。

 公共職業安定所の職業紹介事業は職業安定法に規定があり、具体的な手続きなどを定めた同法施行規則は、公共職業安定所で求職者の紹介を受けた求人者に対し、選考結果や不採用の理由について職安に通知することを求めている。求職者、求人者からの相談や両者に対する援助などに役立てるのが狙い。ただ、罰則の伴う義務ではない。通知は翌年度末まで保存される。

 求職者は紹介状の交付を受けるため職安の窓口に出向き、履歴書の作成で誤字、書き損じのないよう神経を使い、面接会場に足を運んでいる。そうしたことを考えると、事実と異なる通知をした事業者側の「ついつい」とか「ばたばたして」という弁明は軽く、不誠実。個人に関する誤った情報が、本人も知らないまま1年以上にわたって保存されることになる。事実と異なれば本来の目的も果たせない。記者は職安の担当者に対し、求職者から照会があれば不採用理由を開示していることを、求人者に伝えるようにしてはどうかと提案した。

 奈良労働局職業安定課は「求人者が安定所に選考結果を不正確に伝えていたことになり、職業相談や職業紹介に生かせないことになるので残念。求人者には求人受理のとき採否理由を正確に記入いただくよう、より一層の周知徹底を図っていきたい」と話している。

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