地域の身近な問題を掘り下げて取材しています
拠点・奈良県大和郡山市 運営者・浅野善一
多様な環境に数々の野鳥
矢田山遊びの森 ―16―
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2012年10月22日
↑ため池で餌場をめぐって争うバン(左)とコガモ=2010年9月、矢田山遊びの森
↑芝生広場上空を飛翔するオオタカ(幼鳥)=同所
↑峠池とみんなの森の周辺=2012年10月21日、同所

 大和郡山、生駒、奈良の3市が隣接する場所に矢田山遊びの森がある。面積約282ヘクタールの森には子ども交流館やみんなの森、芝生広場などがあり、休日は多くの家族連でにぎわう。ここ遊びの森にはコナラやスギ、ヒノキなどの樹木が多く、雑木林に生息するヤマガラやシジュウカラ、エナガ、キビタキなど数多くの種類の小鳥が観察される。

 さらに、芝生広場ではハクセキレイをはじめホオジロ、モズが芝の隙間に潜む餌の昆虫やトカゲなどを捕らえている。また芝生広場の隣には二つの池(峠池)があり、カイツブリやカルガモなどの水鳥が飛来し、餌場をめぐるバンとコガモの争いやカイツブリ同士の争いなどが見られるときもある。

 バンは夏鳥として全国に飛来する野鳥だが、関東地方以南では越冬する個体も多いとされている。主に沼や池、水田などのアシやハスが茂る場所に生息し、体長約32センチ。背面は灰黒色で顔面や腹部は黒色。翼と尾の一部に白い部分があり、鮮やかな赤色のくちばしが特徴だ。

 一方、コガモは冬鳥として全国に飛来し、沼や池、河川のアシ原に生息するが、市街地の公園などでも見られる。体長は約35センチ。雌は頭部から背面にかけて茶褐色で、腹部は淡い茶色に細かい班がある。雄は頭部が赤みを帯びた茶色で、目の縁から後頭部にかけて帯状に濃い緑色の部分があり、背面および腹部は淡い褐色に細かい班がある。雄、雌ともに翼の一部に鮮やかな緑色の部分があり、これが他のカモ類との識別の目安になっている。

 遊びの森は矢田丘陵の一角にあるため、時折、周辺で繁殖する猛禽(もうきん)たちも姿を見せる。かつて矢田丘陵にはオオタカ3つがいが繁殖しているとされ、法隆寺周辺や平群町、遊びの森南側付近で頻繁に観察されていた。しかし、近年、矢田丘陵の生駒市側で宅地開発が進み、このような場所でもオオタカは時折、飛翔が確認されるだけになってしまった。遊びの森上空には夏場、サシバやハチクマが飛来する他、秋から冬にかけては峠池周辺でハイタカやノスリ、ツミなどが観察される。

 森や芝生、池など多様な環境に、野鳥に限らずどのような生き物たちが生息しているのかを学ぶための最適な場所「矢田山遊びの森」。自然観察会などで訪れてみてはどうだろうか。

 (よな・しょうぞう=野鳥写真家、生駒市在住)=毎月第2、4月曜に更新

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