奈良市の宅地造成会計、29日に廃止
保有地拡大の損失、借金で穴埋め
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奈良市宅地造成事業費特別会計を使い1億7800万円で取得後、放置されている元ため池。囲いのさくの扉もさび付いている=奈良市大安寺7丁目 |
奈良市の公共事業に伴う立ち退きの代替地確保などを目的とした「宅地造成事業費特別会計」が今月29日、廃止される。42年間続いた特別会計だが、保有地の拡大が裏目に出て不良資産が累積。市は同特別会計を閉鎖するに当たり、負債約14億5000円を10年で返済するが、財政が被った実害は大きい。残された土地26万4673平方メートルのうち約65%が、平城宮跡にある工場の移転中止に伴って発生した遊休地で、活用は決まっていない。
高値の取り引き、元議長の関与も
負債の返済は、昨年の地方税法改正により総務省が導入した「第三セクター等改革推進債」を適用。前年度は1県8市町村が同起債の同意を国から受けた。一方、不要な土地が増え、悪化した奈良市の宅地造成会計に対し、市の包括外部監査人は約7年前、同会計を閉鎖し清算する必要があることを厳しく指摘していた。しかし市の具体的な施策は進まず、2009年度末の保有地土地簿価は32億円に及び、実勢価格との開きが著しかった。
市土木管理課は「地価の上昇期には、代替地を先行取得する意義があった」と話す。だが、土地購入に伴う借入金の利子が増加し、用途が不明瞭になった土地は少なくない。市議会の大御所と呼ばれた元議長(故人)が関与し、長年塩漬けになっていた同市石木町の元代替地や、1億7800万円で買収した後に16年間も放置されている大安寺7丁目の元ため池もある。また、土地の取得が適正な時価を超えていた疑いの取り引きは複数ある。
平城宮跡にある工場の元移転用地(同市中ノ川町)は、同特別会計と市土地開発公社の保有地分と合わせ約33万平方メートル。一時、跡地周辺への文化財総合機構の誘致を掲げた県にも責任の一端がある。当初は県、企業、奈良市の三者が共同で移転を進める計画だった。
財政健全化法に基づく同特別会計の「資金不足比率」は08年度、改善が必要な数値になり、経営健全化計画を実行するよう国から促されていた。
同課は「会計として、もはや残す意味がない」として29日付で廃止の手続きを進める。造成済みの同市秋篠町や同市青山などの土地は販売し、売れれば元利償還金の利子などが軽くなる。一部の土地に購入希望者がいるという。
奈良市は、この特別会計とは別に市土地開発公社が保有する不良資産も巨額で、09年度末の簿価は200億円近い。これまで財政情報の詳しい公表が遅れ、住民のコントロールに委ねられてこなかったところにも、市有地の不毛な拡大を招いた一因があるといえる。
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