塩漬け15年、今年度も活用見送りか
取得目的不透明の奈良市公社所有地
当時の市会議長から高値購入
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市会の大御所と呼ばれた元議長から公社が高値で買い取ったJR奈良駅前の土地。活用のめどが立たず不良資産に=奈良市三条大宮町 |
奈良市と実質的に一体の外郭団体、市土地開発公社が15年前、当時の市会議長から購入したJR奈良駅前の土地225平方メートルの簿価(取得額に借入金の金利などを上乗せしたもの)が約5億8000万円に達していることが、市が開示した「公有用地明細表」から分かった。取得の目的が不透明で、今年度も活用が見送られる公算。金利負担の累増などで市の財政が被る実害は大きい。
市会の大御所と呼ばれた浅川清一氏(故人)が保有していた土地で、公社は時価より高い4億5500万円で買い上げていた。浅川氏は問題の土地をその約5年前に市内の地権者から買い取っていた。市は表向き「公営住宅の駐車場にする」としていたが、その後、今日まで何の利用もされることはなく、借入金の金利や管理費が毎年かさみ、無駄を生んでいる。
総務省が24日、発表した全国の土地開発公社調査によると、奈良市の場合10年以上にわたり保有する長期保有地は195億3200万円(2009年度)に及び、他の中核市の公社と比べ、著しく深刻な経営悪化に陥っている。
記者のこれまでの調べでは、こうした取得目的が不明な土地のほか、奈良町の振興計画が膨張して不良資産化したもの、平城宮跡にある工場の移転先用地が宙に浮いたものなど、さまざまな性格の遊休地がある。
市は状況を重く見て、外部の識者ら5人で公社の経営改善を探る委員会を今年から開催。議員が関与した疑惑は、JR奈良駅周辺以外の遊休地でも燻りくすぶり続けており、財政健全化の視点だけで改善を展望することには無理がある。今後の委員会の方向が注目される。
また、議員による関与だけでなく、早期に有効な対策を講じなかった元市長らの不作為もあるとみられる。市内一円に点在する遊休地を長年放置しながら、総務省が進める健全化対策を拒んだ経緯があり、市が正式に土地開発公社の健全化計画を策定したのは、前市長の藤原昭氏のときから。
不透明な土地取得をめぐっては、市が買収の相手方と価格について情報公開制度の運用上、「保護すべき個人情報」として扱ってきた点にも問題があった。最高裁は05年の判決で、公開を妥当とする判断をしている。
公社が浅川氏から購入した土地は現在、フェンスが巡らされたまま、空き缶やごみが散乱している状態。当時を知る職員も少なくなってきた。担当の都市計画課は「まだ利用見通しが立っていない」と話す。
総務省によると、全国の道府県、市町村が設立した土地開発公社が買収した土地のうち、10年以上が経過した塩漬け土地の簿価は2兆2030億円(09年度)に上る。(浅野詠子)
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