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〈視点〉公共工事に不当介入の議員名、公開を奈良市の職員アンケート結果に波紋 談合など入札の不正が後を絶たない奈良市の公共工事をめぐり、市の入札制度等改革検討委員会が実施した職員アンケートがインターネットで公開され、波紋を広げている。この5年以内に市議らから不当な介入を受けたことがあると回答した職員は51人に及び、生々しい実態が明らかにされている。
全職員の比率からすれば、氷山の一角の数字とも考えられるが、勇気をもって誠実に回答した貴重な記録だといえる。これは奈良市だけの問題であるはずはなく、県内の全市町村、そして県の各土木事務所において共有化されてよいものである。 調査では「公職者から、この5年以内に圧力、介入、口利きを受けたことがある」と回答した職員のうち、相手が市議と答えた職員は43人、同様に県議は8人、国会議員は6人だった。 しかし、当の市議らにとって、インパクトはどんなものだろうか。いかに内容が恥ずべきものであっても、議員の氏名が匿名のままであれば、このまま逃げ通せると、高をくくっているに違いない。 「議会の質問を取引条件にしている」と記述した職員もいた。議事が裏取引に使われるなど、地方自治の二元代表制を逆手に取った悪質なケースだ。市は今後、公職者からの口利きなどを職員に文書化させる方向で検討していくようだが、不当な圧力をかける市議の氏名を原則公開とする措置が必要であろう。奈良市の情報公開条例は「公務員氏名の原則公開」を盛り込んでおり、特別地方公務員である市議の氏名を、保護すべき個人情報として取り扱うことには慎重でなければならない。 一方、一部の有権者の側にも問題があり、圧力をかける市議の背後には、悪質な市民が存在するという職員の声も寄せられた。また、入札制度だけでなく、待機児童が多い保育所の入所をめぐる市議の介入などの苦情は、かなり以前から出ており、福祉部局との連携も大切だろう。 公共事業と議員の関係について記者は地方紙に在籍していた1990年代から取材・報道を続けており、今回の職員アンケート結果を読んで、議員の所業については大きな驚きはなかった。衝撃的だったのは、「下の職員が正そうとしても押さえつけられる」など、保身ととれる市の管理職たちの姿である。「力ある者にこびて太ろうとしている」「強い者に弱く、弱い者に強く、奈良市の職員なんてそんなものでしかない」「丸投げ(一括下請け・上請け)などを上に報告するほど嫌がられた」など、これでもかというほど出てくる。 こうしたあからさまなお役所の実態が浮き彫りになってきたこと、それ自体、市長交替がもたらした「変化」であることを、市民に感じさせるのではないだろうか。 |
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