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〝住民主体〟の景観づくり、成果を報告奈良市の大宮通り、県が仕掛け
住民主体のまちづくりの先例にと、県が奈良市の大宮通りで仕掛けた「景観まちづくり」の報告会がこのほど、奈良市四条大路5丁目の都跡公民館尼辻分館であった。成果として、2年間にわたり行われた勉強会や先進地の視察▽歩道への花の植栽▽この間に進められた沿道看板の縮小・撤去や店舗などの景観に配慮した色への塗り替え▽大宮通りの景観の在り方をまとめた作法集の作成―などが報告された。(記事の後に「視点」) 県地域デザイン推進課は大宮通りを観光都市・奈良市の中心部への玄関口と位置付け、来訪者をもてなすのにふさわしい景観の在り方を、住民を巻き込んで考えることにした。平城宮跡朱雀門入り口の前後の県道1.2キロを対象とし、沿道の自治会住民、商工関係者に協力を呼び掛け、2008年11月から取り組んだ。 花の植栽は住民の提案で、日々の世話も住民が行っている。店舗の塗り替えなども住民の提案が反映されており、県と奈良市が費用の助成制度を設けて実施された。9件の制度利用があったが、この中には勉強会の参加者もいた。作法集には住民の勉強会の成果も反映された。 報告会には40人余りが参加した。パネルディスカッションでは、住民らでつくる「大宮通り景観まちづくりの会」会長の北中征夫さんが「まちの景観をよくするためにできることは何かを考え、花の植栽を始めた。少しは前向きに取り組めたかなと思う」と振り返った。事業者の立場からは、大宮通り商工振興会の楠田聖治さんが「景観というと規制されるのではないかと心配したが、作法集は紳士協定のようなものということなので協力したい」と感想を述べた。 県の大宮通り景観まちづくり事業はこれで終了するが、同事業で発足した住民組織「大宮通り景観まちづくりの会」が月1度の「景観まちづくり井戸端会議」を住民参加で開催するなどして活動を継続する。事務局を地元自治体である奈良市の景観課が引き継ぎ、支援していく。 〈視点〉手法転換のきっかけにできるか奈良市の伝統的な町並みが残る奈良町で昨年夏、町家が取り壊され、共同住宅が建設されることが分かったとき、住民の反対運動が起きた。もともと景観が資源になっている地域では景観への関心は高い。一方、ビルや店舗が立ち並ぶ市街地や郊外の幹線道路沿いで景観が議論されることはあまりない。目立つことを意識した派手な色が無秩序にあふれる。大宮通りでも景観をめぐって住民運動が起きていたというわけではない。しかし、景観は景勝地だけの課題ではない。市街地などであっても人々の視界に入る空間の眺望は公益的な財産である。市民は落ち着きのある景観を求めることができる。事業者はこれに応える責任がある。制度も整えられた。県は2009年11月から県景観条例や景観計画に基づき、県内重点地区を中心に一定規模以上の建物の新築や塗り替えに届け出を義務づけ、周囲の景観になじまない色彩は規制する。奈良市なども同様の制度の運用を始めている。 大宮通り景観まちづくりで県が先例として実践しようとしたのは次のようなものだ。一つはまちづくりにおいて、行政が決定事項を住民に伝えるだけだった従来の手法から、住民が関わりながら時間をかけて進めていく手法への転換。もう一つは行政任せだったまちづくりの在り方において、自分たちの住むまちの姿は自分たちで描くという意識の住民への定着。今回の取り組みでは、県が用意した〝住民主体のまちづくり〟というみこしに地元住民が乗った格好だ。評価は今後、大宮通りでの活動が持続するかどうか、さらに、これを広くまちづくりの手法転換のきっかけにできるかどうかで変わってくる。県には見届ける責任があるだろう。 |
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