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眺望保全計画、行基広場に反映を県の大屋根で影響大 奈良市の意見募集
奈良市が市眺望景観保全活用計画の策定に向け、市民からの意見募集を始めた。市内では現在、県が近鉄奈良駅前の行基広場に大屋根を計画しており、こちらも県民から意見を募集をしているところだ。しかし、雨よけが目的で、建設を前提とした大屋根に、眺望を考える視点は見当たらない。行基広場は40年前、当時の鍵田忠三郎市長が、地下駅を下りた観光客にまず青空を見てもらえる場所をと実現させたもので、今もその意味は失われていない。市は保全計画を行基広場にも反映させるべきだ。
奈良市は「奈良らしい眺望景観」の候補として、奈良公園周辺や平城宮跡周辺、西ノ京周辺などの歴史的景観や自然景観など39件を抽出。これらの景観の保全活用のための規制手法や取り組みについて、31日まで意見を求めている。39件の中に行基広場はないが、追加候補も受け付けている。 一方、県道路・交通環境課が公表している大屋根の計画案によると、屋根は行基広場の待ち合い空間としての機能向上が目的。広さ約420平方メートルの広場の全面をガラス張りの屋根で覆うもので、鉄骨造り、高さ11メートル。建設費用は1億5100万円で、来年度の着工を予定している。同課は18日まで、この計画案について意見を求めている。 大屋根をめぐっては、計画を公表しないままに建設を進めようとしたことに批判が出た。このため、県は昨年8月、賛否を確かめるため、急きょ県民からの意見募集、行基広場での街頭アンケート、識者からの意見聴取を実施。この結果を根拠に屋根建設への理解は得られたとした。しかし、街頭アンケートなどで尋ねたのは屋根が必要かどうかで、眺望などの景観については尋ねていない。 近鉄奈良駅は1969年に地下に移され、翌70年に駅ビルが完成した。当初の計画に駅前広場はなく、ビルが敷地いっぱいに建ち、東側の東向商店街のアーケードに隣接する予定だった。 この計画に、当時の鍵田市長は「奈良に来るお客さんが暗い地下駅に降り、すぐアーケードの下の商店街に入るのでは大阪などの大都市となんら変わらない」と反対。「観光都市奈良である以上、まず、地下駅から降り、青空の見える広場に出て古都の空気と風情を味わってもらい、それからそれぞれの公園とか商店街とか、その目的地に行ってもらう、余裕のある観光都市の玄関にせねばならぬ」と考え、近鉄などに駅前広場の設置を求めた。要求は通り、市は広場の象徴として、奈良とかかわりの深い奈良時代の僧、行基の像の噴水を設置した。 広場に立つと、奈良公園方面の視界が開けていて、広い空をよく見渡すことができる。大屋根が出来れば、駅を出て最初に見えるのは空ではなく屋根になり、眺望は大きな影響を受ける。 歴史的都市の玄関となるJR、近鉄両奈良駅前の景観の課題を指摘してきた市在住のデザイナー横井紘一さん(70)は、大屋根は不要とする。「必要なのはおもてなしの景観。歴史を感じる緑と青い空は奈良に一番求められている景観であり、行基広場から望む空とかすかに見える春日の山の緑、それに足元の行基像を組み合わせた景観は、いいおもてなしになる」と話す。 市観光振興課によると、行基広場の敷地は近鉄の所有で、管理は奈良市だが、市が許可権限を持つのは街頭活動などで使用する場合で、大屋根のような建築物には及ばないという。 眺望景観保全活用計画の策定を進めている市景観課の仲谷裕巳課長は「意見募集で市民の皆さんのいろんな意見を聞きたい。候補を39件に絞ったがそれが全てではない。さらに挙げてもらえれば」とし、大屋根について「行政的な規制は難しいかもしれないが、市民の意見は県へのメッセージにもなる」としている。(浅野善一) |
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