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県都の映画館 ゼロになったのか?W・Mシネマズ高の原 位置や市税賦課は奈良市京都府境のSC内 08年まで市高齢者無料入場制度の対象にも
昨年1月、奈良市の三条通りにあったシネマデプト友楽が閉館したことで、奈良県は県庁所在地の映画館がゼロになったとされている。確かに奈良市を所在地として、興行場法の営業許可を受けている映画館はなくなった。だが、京都府木津川市相楽台1丁目のイオン高の原ショッピングセンターにあるワーナー・マイカル・シネマズ高の原は、境界を越えて奈良市側に位置しており、法人市民税などの市税を賦課しているのは奈良市。また、奈良市内の映画館を対象にした市の高齢者無料入場制度も、08年に制度が廃止されるまで利用できた。全くの映画館空白地帯になったわけではない。
奈良市内では、東向商店街にあった地下劇場も09年3月に閉館しており、友楽の閉館で市の中心市街地から映画館が消えてしまった。全国興行生活衛生同業組合連合会(東京)によると、県庁所在地で映画館がないのは奈良と徳島だけという。 一方、07年4月、イオン高の原ショッピングセンターの開店に伴って、ワーナー・マイカル・シネマズ高の原が開業した。 イオンリテール(千葉市)のコーポレートコミュニケーション部などによると、同ショッピングセンターは敷地や建物の南側部分が奈良市右京1丁目にまたがるが、大規模小売店舗立地法の届け出は、店舗部分がより多く属する方の都道府県となるため、同法律上、ショッピングセンターの所在地は京都府側の木津川市となった。
これに対し、市税に関しては奈良市内の映画館として扱われる。奈良、木津川両市にまたがっているショッピングセンターへの市税の賦課は、それぞれの地理上の位置に応じて行われるため、奈良市側にある敷地や建物の固定資産税、テナントの法人市民税などを課すのは同市となる。 また、奈良市の70歳以上の市民を対象にした、老春手帳高齢者優遇措置事業の映画館無料入場制度も、08年9月に制度が廃止されるまで利用できた。市長寿福祉課によると、地元の右京地区自治連合会から、映画館の開業にあたって同制度の対象にするよう求める要望があったためだ。映画館側からも同制度に協力する旨の申し出があったという。 この事業の実施要項には「市内の映画館への無料入場」とあるのみで、「市内の映画館」についての具体的な規定はなかった。このため制度の適用にあたっては、位置が奈良市側であることや、市税の賦課対象になっていることを根拠にした。 当時、無料入場券は1人につき3カ月に5枚を配布しており、07年度の利用は市内の全映画館で9万8766件。このうち同映画館での利用は2万8918件に上った。08年度(制度があった9月まで)も5万9220件に対し2万1373件あった。いずれも全利用の3分の1を占めた。 高の原の映画館が開業する前年06年度の無料入場券の利用は、7万4031件にとどまっていたことから、同映画館のある市北部周辺で新たに制度を利用する人が増えたものと、同課はみている。市は1人900円の入場料(当時)を全額負担しており、07年度は8888万9400円を支出した。 ただ当時は、厳しい市の財政事情を踏まえて制度の廃止が検討されていた時期でもあり、市が「京都の映画館」を制度の対象にしたことを、市内の同業者は批判していた。 ワーナー・マイカル(東京)の広報室によると、高の原の映画館の入場者の半分ほどが奈良市民という。奈良市民が市内で映画を見る機会がなくなったわけではない。映画館がない県庁所在地という〝汚名〟を少しは返上したい。(浅野善一) |
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