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築100年 奈良町の長屋 宿泊施設に学生マンション建て替え免れ 再生
奈良市紀寺町の築100年の老朽化した長屋が宿泊施設として再生した。家主は学生マンションへの建て替えを考えていたが、近所の建築家が伝統的な町家の消滅を惜しみ、宿泊施設を提案、取り壊しを免れた。歴史的町並みで知られる「奈良町」には、数多くの町家が残っているが、近年は維持の困難さなどからマンションに建て替えられたり、駐車場になったりする例が増えている。同宿泊施設は町家の新たな活用例になりそうだ。
1戸貸しで町家暮らしの味わい再生に取り組んだのは、同市紀寺町の建築家藤岡龍介さん(59)と長男で同宿泊施設責任者の俊平さん(29)。改修費は家主が負担、藤岡さん側は建物を賃借し、宿泊施設として運営する。今月28日に「奈良町宿 紀寺の家」として開業する。
各戸の築年数は詳しく分からないが、およそ80~100年。古いものは大正初期という。広さは57~74平方メートル。借家として使われていたが、ここ20年間は空き家で、朽ちるに任せていた。俊平さんによると、家主も愛着を持っていて、残したいとの思いはあったという。 宿泊施設を選んだのは、泊まってもらうことで現代の町家暮らしを提案できるから。町家を生かした施設としてはカフェやギャラリーが多いが、元のまま残すには本来の住居として使うのが良いと考えたという。現代の家族が楽しみながら暮らせる町家を念頭に、そのモデルハウスのようなものを目指した。 改修に当たっては、建具や天井板、柱、はりなどは、なるべくそのまま生かすようにして、足りない分は取り壊される町家のものを譲ってもらうなどもした。随所に建物の歴史を感じさせる雰囲気が残った。現代風に改装されていた台所は土間に戻した。一方で、現代の暮らしに合わせて、風呂や床暖房、エアコン、ベッド、電磁調理器など、かつての町家にはなかった設備もうまく調和させた。耐震性も向上させた。 苦労したのは職人の確保。最近は町家のような伝統構法に関わる機会がなく、経験のある職人が不足しているため、若い職人に講習をしながら工事を進めたという。 宿泊施設とする3戸は、庶民の借家として使われていた長屋ながら、広めの庭に縁側のあるもの、通り庭と呼ばれる土間のあるもの、玄関の引き戸を開けると前庭があるものなど、それぞれに特徴があり、それが各戸の改修後の個性にもなった。 開業を控えて、近所の町家などに暮らす人を招いて施設を披露した。「こんなに良くなるんだ」と感心してもらえたという。 俊平さんは「奈良町には空き家の町家がたくさんある。このままではつぶされていくばかり。町家に暮らしてみたいという人が増えるきっかけになれば。また、奈良は宿泊施設が少ない。奈良らしい宿泊施設としてビジネスモデルにもなれば」と話している。 「紀寺の家」の宿泊料金は1泊朝食付きで2人の場合、1人1万5000円。夕食は1人2500円。問い合わせは電話0742(25)5500。ホームページはhttp://machiyado.com (浅野善一) |
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