消防業務やごみ処理などを共同で行うため奈良県内の市町村が設立している一部事務組合31団体の情報公開条例制定率が3割にとどまっていることが、県市町村振興課などへの取材で分かった。全国平均の4割を下回っている。同様に広域行政推進のため設立される広域連合で条例を制定しているのは、2団体のうち1団体だった。一部事務組合や広域連合が行う事務は市町村事務の一部であり、市町村同様の情報公開が求められる。条例の制定が急がれる。
一部事務組合や広域連合は、都道府県や市町村などの普通地方公共団体が事務の一部を共同処理するために設ける団体で、特別地方公共団体と呼ばれる。
県市町村振興課が2010年4月1日現在でまとめた条例の制定状況をもとに、未制定だった組合にその後、状況に変わりはないか電話で確認した。
条例を制定している一部事務組合は九つで、制定率は29%。このうち七つは、中和広域消防組合など消防または消防を中心とした業務を行っている組合だった。残る二つは御所・田原本環境衛生事務組合と国保中央病院組合。御所・田原本環境衛生事務組合は2011年3月の設立と同時に条例を施行した。
ほかに、条例ではなく要項を設けている組合が一つある。
また、広域連合では県後期高齢者医療広域連合が制定している。
これに対し、全国の制定状況は、総務省行政経営支援室によると、2010年4月1日現在で一部事務組合が39.6%、広域連合が87.8%。一部事務組合で制定率が最も高いのは兵庫県で82.6%、逆に最も低いのは山梨県で6.2%となっている。
未制定の組合の多くは取材に対し、条例の制定を検討課題としながら、今のところ制定の予定はないとした。具体的には「他組合の制定状況の把握を行っているところ」(県市町村総合事務組合)、「将来的には必要だが、検討はまだ」(香芝・王寺環境施設組合)、「組合の規模が小さく対応が遅れている」(葛城広域行政事務組合)、「対応できる体制が整っていない」(宇陀衛生一部事務組合)、「職員は役場職員の兼務で、進めるのに限界がある」(青葉山組合)などとした。制定が進まない理由の一つとして、組合間の横並び意識や様子見といったことがあるとみられる。
こうした中で、桜井宇陀広域連合は「条例の事務局案はできているが、具体化の機会を逃している」とし、「制定に向け早急に検討を進めたい」と説明した。ことし1月23日に設立されたばかりの南和広域医療組合は、2012年度中の制定を目指すとしている。
一方、県住宅新築資金等貸付金回収管理組合は条例制定に否定的で、「扱っている情報のほとんどが個人情報で、回収状況は逐一、構成市町村に報告している。情報公開はそれぞれの市町村で行ってほしい。市町村によって情報公開の対象の範囲が住民に限られているかどうかなど条例の中身が違い、うちで一括して公開すると支障を来す。これらは構成市町村との間で確認している」とした。
(「南和広域医療組合」は当初の記事作成時に存在を把握できていなかったため、3月30日に追加、それに伴い記事の一部を手直しした)