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采女伝説が朗読劇に 奈良・福島の物語交差寮美千子さんが制作 23日、大乗院庭園文化館で披露演劇集団の若者出演 震災避難者の招待も
奈良市と福島県郡山市のそれぞれにある采女(うねめ)伝説をもとに、奈良市在住の作家寮美千子さん(56)が朗読劇「二人の采女」を作った。両地で異なる二つの物語を交差させた。6月23日午後2時から、同市高畑町の名勝大乗院庭園文化館で披露する。出演は奈良県内を拠点に活動する演劇集団の若者たち。伝説の舞台の一方が東北であることから、東日本大震災の避難者でつくる「奈良県被災者の会」の人たちを招待する。
采女伝説は奈良時代、朝廷に仕えた采女(女官)の悲恋の物語。奈良に伝わる物語では、みかどの寵愛(ちょうあい)を失った采女が悲嘆して猿沢池に身を投げたとされる。一方、郡山では、婚約者がありながら、年貢米免除の代わりに采女として差し出された里長の娘の物語として伝わる。両都市は采女伝説が縁で姉妹都市提携をしており、どちらにも戦後に始まった采女祭がある。 「二人の采女」は、奈良、郡山それぞれの物語の采女が登場し、自分こそが本物の采女であると主張する。伝わる物語の違いを通して、支配する側の中央と支配される側の地方の物の見方の違いを浮き立たせた。笑いを誘う喜劇風の構成になっているが、震災で発生した福島県の原子力発電所事故を想像させる場面もあり、現代の地方の状況を重ね合わせる風刺も効かせている。郡山の方言も「奈良県被災者の会」の人の協力で正確なものにした。 寮さんによると、この作品は昨年9月、市内の別の劇団から采女物語をテーマに脚本を依頼されて書いたものだが、不採用になった。一方、出演するのは、安堵町在住で作家・演出家として劇団「Cross Rope Life(クロス・ロープ・ライフ)」を主宰する新居達也さん(26)と演劇仲間の若者たち。新居さんたちがことし4月、奈良市内の喫茶店で公演した際、寮さんは「宙に浮いた原稿を何とかしたい」との思いで、鞄に原稿をしのばせて会場に出かけた。芝居が気に入った寮さんは、その場で出演を持ち掛けたという。 出演を予定しているのはほかに、奈良市立一条高校3年米谷唯さん(18)、大阪芸術大学2年山口喜子さん(19)、販売店店長長野巌男さん(23)、大阪産業大学2年豊田優介さん(19)ら。 4月18日、メンバーが寮さん宅に集まり、1回目の読み合わせをした。寮さんの知人の演出家・俳優の丹下一さんや俳優の「あかる」さんも加わり、演劇のプロとして手本を示すなどした。 寮さんは「地方がなぜ采女を差し出さなければならないのか、服従していったのかということと、福島になぜ原発をつくるのか、この二つは同じだ。今日の社会状況に重ね合わせ、時代性のある作品を書いた。朗読劇は本を持ってできるので、被災者の人たちが上演することもできる」と話している。 新居さんは「(出演依頼を受けたときは)びっくりしたけど、うちの芝居を見て声をかけてもらい光栄。作品がすごく面白い。福島の被災者への思いも理解できる。表現活動をしている中で、地震について思うところもあった。被災者のために何かできれば。こういう経験をさせてもらえありがたい」と話している。 入場料は500円。先着35人で事前予約優先。申し込みは「ならまち通信社」、メールinfo@narapress.jp、電話070(5024)9428。朗読劇終了後、茶話会を予定している。 (浅野善一) |
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