地域の身近な問題を掘り下げて取材しています
拠点・奈良県大和郡山市 運営者・浅野善一
気象に左右される水場
暑さから身守る ―9―
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2012年7月9日
↑山間の水場に現れたメジロ(左)とシジュウカラ=2012年6月30、平群町
↑水浴びを楽しむカワラヒワ=2012年6月15日、平群町
↑濁流で流されてしまった水場=2012年7月7日、平群町

 梅雨が明け、夏の暑さが本格的になると、野鳥たちは暑さから身を守るため水場周辺に集まって来る。そして、水辺の中にも多くの野鳥たちが集まって水浴びを行う特定の場所がある。このような場所を、観察者の間では「水場」と呼んでいる。しかし、水場といってもその環境はさまざまで、環境の違いによって利用する野鳥の種類も異なってくる。

 例えば、オオタカやハヤブサ、ミサゴなどのタカの仲間は、大きな河川の中州やため池の淵で水を飲んだり水浴びを行ったりする姿を見かけるが、メジロやウグイス、シジユウカラなどの小鳥たちは、山間にある小川のせせらぎなどを利用して水浴びを行う。中でもシジユウカラは水浴びが大好きな野鳥で、小川の浅瀬にある水場に頻繁にやって来ては、他の小鳥たちと一緒に水浴びを楽しんでいる。

 シジユウカラは日本全国の低地から山地の林まで幅広く生息し、市街地の公園や庭先など樹木のある場所なら普通に見られる。体長約15センチ。くちばしから頭部にかけて黒色でほおは白い。背面は上部が緑色で翼の部分が青灰色である。腹部は真っ白で、のどから尾にかけ黒くて太い縦斑があり、その姿がネクタイをしているようで実に愛くるしい。

 シジユウカラ以外にも水浴びが好きな野鳥たちは数多くいる。カワラヒワもその一つだろう。カワラヒワは北海道から九州までの平地や低山の林、市街地の公園や川原などに生息する野鳥で体長約14センチ。くちばしが淡いピンクで頭部は緑色がかった褐色。背面および腹部は茶褐色。翼の縁が鮮やかな黄色でよく目立つ鳥だ。あまり人を恐れることのない野鳥で、雨上がりの後など、市街地の公園や道路のわだちにできた水たまりなどで水浴びを行っている姿を見かけることもある。

 このように、野鳥たちは水場としてさまざまな場所を利用しているが、その環境は気象条件によって変化する場合があり、実に不安定である。例えば、河川の中州は大雨が降ればなくなってしまうし、山間の水場も水量によって流れが変化したり、濁流にのまれなくなってしまうこともある。

 ゲリラ豪雨や竜巻などが多く発生し、異常気象が取りざたされている昨今、清らかな水が流れる水場の環境を保全していくことは、命の源である水を守ることであり、野鳥のためだけではなく、私たち人間も含め、あらゆる生き物たちにとって非常に大切なことではないだろうか。

 (よな・しょうぞう=野鳥写真家、生駒市在住)=毎月第2、4月曜に更新

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