連日猛暑が続く7月下旬。暑さに負けず必死に子育てを行っている野鳥がいる。カイツブリだ。
カイツブリは日本各地の河川や湖、沼、ため池などに生息し体長約26センチ。くちばしは黒色で付け根の部分に黄色の斑(はん)がある。頭部から背面にかけては黒褐色で、ほおからのどにかけては赤みを帯びた茶色。目が黄色く、表情が何となくひょうきんな感じに見える愛くるしい水鳥だ。
歩くのは苦手でほとんど水上で暮らしている。餌は、水中に潜り、フナやタナゴなどの魚類やカワエビ、ザリガニなどの甲殻類、水生昆虫などを捕らえて食べる。また水面に浮遊するヒシなどの植物の実も食べる。
繁殖期は2月から8月までと、他の野鳥に比べると長く、個体によってもさまざまである。水面の淵に雄、雌共同でアシの葉や水中の水草を積み上げ「浮き巣」を作る。卵は3~4個で孵化(ふか)までは約3週間かかる。
生まれたばかりのひなは常に親鳥と共に行動し、危険を察知すると、すぐに親鳥の背中に乗って翼の下に隠れ避難する。また雄(親鳥)は水中に潜り、捕らえた獲物は水面にたたきつけ食べやすくしてひなや雌(親鳥)に与える。このようにして約40日もの間、炎天下で子育てにいそしむ。ため池の多い奈良県ではあちらこちらでカイツブリ家族のほほ笑ましい姿を見ることができる。
ちなみにカイツブリは琵琶湖に多く生息し、滋賀県を象徴する鳥として県鳥に指定されている。
突然の豪雨や猛暑に見舞われるなど異常気象が続く近年、繁殖場所の河川やため池が豪雨のために氾濫し、浮き巣やひなが流されることも多くなっていることだろう。農業の衰退によってため池や沼などの補修がおろそかになり、堤などが決壊してしまう事態は、人間にとっても治水と防災の観点から決して好ましいことではないだろう。水辺周辺の環境が変化することは、カイツブリなど多くの生き物たちにも被害を与え、生態系の異変を招くことを、私たちは認識すべきではないだろうかうか。
(よな・しょうぞう=野鳥写真家、生駒市在住)=毎月第2、4月曜に更新
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