名阪国道針インターを出て国道369号を南下、途中から県道81号に入ってしばらくすると、東側に曽爾高原が見えてくる。
曽爾村に位置する、曽爾高原は関西屈指の高原として知られ、春から秋にかけ多くのハイカーや観光客が訪れる。特に秋、ススキが高原全体を覆いつくすさまは圧巻で、夕日に映えるススキの群落を写そうと多くのカメラマンがやって来る。また高原には国立曽爾青少年自然の家があり、大学生の研修や企業の研修が行われたり、小中学生の野外活動などに利用されたりしている。
このようにたくさんの人々でにぎわう曽爾高原だが、奈良県の中でも、この地域だけで繁殖が確認されている野鳥がいる。ホオアカだ。
ホオアカは体長約16センチ。スズメよりやや大きく、北海道から東北地方では低地の川原や草地などで繁殖し、本州中部から九州では山地の高原で局地的に繁殖する。
頭部は灰色で背面から尾羽根にかけては茶褐色。腹部は淡い茶色だ。胸には黒と茶色の二重の帯があり、ほおの赤褐色がホオアカという和名の由来とされる。
繁殖時期の5月から7月にかけて曽爾高原のあちらこちらで、イタドリなどの低木のこずえやススキに止まり、大きな声でさえずる姿が観察される。
巣は地上や低木の横枝にササや小枝を使って作り、3―4個の卵を生みつける。抱卵から20日前後でひなが誕生するが、巣立ちまではさらに20日ほどかかる。
曽爾高原ではホオアカ以外にもさまざまな野鳥が観察される。例えば体長約13センチと小さなセッカをはじめ、ヒバリ、キジ、カッコウ、ホオジロなどである。10年ほど前まではコヨシキリも観察されたが、現在では目にすることはなくなった。これも地球温暖化の影響なのだろうか。
曽爾高原を訪れる人びとの多くが亀山(849メートル)や倶留尊山(1037.6メートル)の登山を目的にやって来るが、単に健康のための山登りだけに集中するのではなく、高原に生息する野鳥たちの姿や美しいさえずり、華やかな高山植物にも関心を持っていただき、大自然の素晴らしをぜひとも満喫してほしいものである。
(よな・しょうぞう=野鳥写真家、生駒市在住)=毎月第2、4月曜に更新
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