自治体が土地開発公社に買収を命じたまま、取得から5年以上が経過し、用途が決まっていない「塩漬け土地」の比率が100%に達している団体は、奈良県内で14市町村に及んでいることが、総務省が2010年度に実施した全国調査から分かった。近畿の府県の中で最も多い。公有地の拡大に伴う借入金の累増問題は、奈良市の巨額な将来負担が知られるが、県内の各地でも財政への深刻な影響が出ている。
調査は、国が毎年実施し、昨年12月に公表した資料を「奈良の声」が検証し、長期保有土地の簿価の比率を周辺の府県と比較することで、県内市町村の問題が浮き彫りになった。
14市は、簿価の多い順に、天理市(28億円)、香芝市(26億円)、平群町(19億円)、御所市(18億円)、河合町(9億円)、三郷町(5億円)、 大淀町(4億円)、吉野町(1億円)、高取町(6800万円)、下市町(4500万円)、宇陀市(3400万円)、安堵町(3200万円)、曽爾村(2700万円)、川西町(1800万円)。
近畿の府県で塩漬け土地の比率が100%の団体が多いのは、大阪府(12団体)、和歌山県(9団体)などとなっている。
国の資料では、奈良県内の30市町村が保有する土地の94.8%が塩漬け土地で、簿価は551億円に上る。奈良市の179億円が最大。塩漬け比率が90%台に達しているのは、同市のほか、大和郡山市(78億円)、橿原市(55億円)、大和高田市(24億円)など9市町村に及ぶ。財政規模で見ると上牧町の35億円、五條市の28億円が甚大な額で、同町は公債費負担比率の上昇により財政健全化団体に一度転落した。
国全体では、土地開発公社の塩漬け保有地の簿価総額は2兆2596億円に上る。
利用の見通しの立たない公有地をめぐっては、法令の特例で3セク債を発行し、公社を解散させる自治体が今後増えるが、塩漬け土地によっては、誰が何のために住民が必要としない土地の買収を命じたのか、不明な点が極めて多い。