平城宮跡の国営公園事業に伴い、国土交通省近畿地方整備局国営飛鳥歴史公園事務所が発注した設計など14件の業務をめぐり、11件までがプロポーザル方式の随意契約で、うち99%台の高止まりの落札率による業者選定は7件に上ることが、生駒市長・山下真さん(弁護士)の指摘で分かった。山下さんは20日夜、「平城宮跡を守る会」(寮美千子代表)が関連の舗装工事に反対して奈良市中部公民館で開いた集会に参加。契約状況について一覧表を示して批判した。
これら契約は昨年8月から今年10月までに行われ、計約7億7000万円の発注があった。14件のうち工事3件は競争入札で行われた。国は落札情報をホームページで公表しているが、住民の大半は契約内容をまだ知らないとみられる。
随意契約が行われたのは、第一次朝堂院広場の造成設計や平城宮跡展示館の設計業務など。いずれも公募型プロポーザル方式といわれる契約で、それぞれ参加表明をした数社などに技術提案書を提出させ、同事務所が業者を選定した。このうち4業務は同一の社かその社のJV(共同企業体)が選ばれた。
山下さんの情報をもとに「奈良の声」が調べたところ、同事務所が公募した技術提案に対し、参加を表明した業者が1社または2社しか現れなかった契約が2件あり、競争性に課題を残した。
会場で山下さんは、平城宮跡歴史公園事業に反対を表明。「契約は入札が基本。随意契約は特殊な業務などに限られる」と疑問を投げ掛け、「今後、復元などに巨額の金をかける計画のようだが、費用対効果の問題はどうなのか」と話した。
国営飛鳥歴史公園事務所は「結果として落札率が高止まりになった契約もあるが、予定価格が適正であり、問題はない。入札では過当競争になって手抜きになる恐れがあるが、プロポーザル方式は主に技術力で業者を選定している」と話している。
署名4595筆を国交省、文化庁に提出
集会では、「守る会」が今月16日、舗装工事中止を求める署名4595筆を国交省と文化庁に提出したことや、両者との話し合いが物別れに終わったことなどを報告。参議院議員の中村哲治さん(国民の生活が第一)や市民ら約40人が参加した。来月に迫る第一次朝堂院広場舗装工事の中止を求め、署名運動や与党民主党議員へのアピールを進めようと話し合った。訴訟の提案もあった。
平城宮の復元を核とする公園整備は、荒井正吾知事が強い意欲を示し、草原の世界遺産がテーマパークのようになるのを懸念する声も出ている。奈良市教育委員会文化財課は今月、「守る会」に対し、国交省の整備方針は1977年の文化庁(奈良文化財研究所)の構想に基づくものであると、国を擁護する説明に乗り出した。しかしこの間、地方分権一括法や景観法が制定され、地域の声を尊重した公共投資へのうねりがあり、国の対応が注目される。
(国営飛鳥歴史公園事務所の談話は10月22日に追加しました)