奈良市の奈良公園の荒池に4日、消火器の薬剤がまかれ、消火器9本が投げ込まれていたことが、県奈良公園管理事務所への取材で分かった。
同事務所によると、同日午前11時ごろ、一般の人から電話で通報があり、奈良署の高畑交番に連絡したという。
荒池は東西、南北各100メートル余り。同公園荒池園地に面しているが、管理は三條水利組合が行っている。近くには浮見堂や円窓亭などの名所がある。
薬剤は、川の水が流れ込む池の東側でまかれ、付近の水面が白く濁っていた。さらに流れに沿って西へ帯状に濁りが広がっていた。事務所は舟を出すなどして水面の泡状の薬剤をすくい取るとともに、浮いていた消火器を回収した。
同事務所によると、消火器はレバーを握らないと発射できないタイプで、何者かが薬剤を池にまいたあと、消火器を投げ込んだのではないかとみている。消火器は円窓亭などに設置しているが、紛失しているものはなかったという。
奈良市消防局によると、消火器の薬剤は通常、リン酸二水素アンモニウムという粉末状のもので、人体への影響はないといわれているという。
通りがかりで現場を見た市内の生物学者谷幸三さん(69)は「荒池には素晴らしい景観があり、いろんな生き物がいる。いたずらとはいえ、けしからんこと」と話している。
こうした行為は廃棄物処理法違反(不法投棄)に当たるとみられるが、奈良署は取材に対し、「捜査上、答えられない」とした。