記者の請求で奈良県が開示した県奈良土木事務所の2007年度平城宮跡国営公園化検討業務発注の起案文書の日付が記入漏れとなっていた問題で、業者に送付したとみられる文書についても、公印を使用する際に行う文書施行簿への記入がされていなかったことが、県への取材で5日までに分かった。同記入を定めた県行政文書管理規程が守られず、文書送付の記録が残らなかった。公文書管理の在り方が問われそうだ。
業者に送付したとみられる文書は所長名で、検討業務の発注に向け、見積もり合わせのための見積書提出を依頼するもの。保存されている見積書提出依頼に関する起案文書に、依頼文書の文案が添えられていた。業者3社が提出した同年5月24日付の見積書も保存されている。しかし、当時の文書施行簿に該当する文書送付の記入はなかった。記者の開示請求を機に、同事務所が確認したところ分かった。
県行政文書管理規程は、施行する文書には公印を押し、公印を押したときは文書施行簿に必要事項を記入しなければならないとしている。文書施行簿には通し番号、公印を押した日、文書の件名、発信者名、あて先、担当者名などを書き入れる。
また、規程は送付文書と起案文書で割り印をしなければならないとしているが、問題の起案文書に割り印はなかった。
同事務所では、公印を押す際の手続きが規程通りに行われていなかった。規程は、送付文書に起案文書を添えて当該の公印を保管する課の長に提出し、照合を受けなければならないとしているが、起案者任せになっていた。そのようになった経緯は不明という。
再発防止で審査印導入へ
同事務所は文書施行簿への記入漏れを受け、再発防止を検討。規程通りに庶務課で文書の照合を行うよう改めることにした。照合が行われたことを示す審査印を導入し、起案文書に押すようにするという。
山岡伸幸・同土木事務所次長は起案文書の日付記入漏れや文書施行簿の記入漏れが相次いで分かったことについて「ルーズだ」とし、他にもあるかどうかについては「可能性はある」とした。その上で、「文書管理の強化が必要。公文書、公印の意味について周知を図りたい」としている。