奈良県奈良市議の政務調査費の人件費に関する開示請求に対し、支出先の氏名や住所を、個人情報を理由に非開示としたのは違法として、市内のフリージャーナリスト神野武美さん(60)ら県民8人が土田敏朗議長を相手取り、非開示処分の取り消しを求める訴えを奈良地裁に起こした。
訴状などによると、神野さんらは昨年9月14日、市情報公開条例に基づき、市議5人の2011年度政務調査費について、人件費3200円~44万円の領収書などの証拠書類を開示請求した。
これに対し、土田議長は同月27日の開示決定通知書で、領収書の債権者と雇用契約書の被雇用者のいずれも氏名や住所など一部について、「個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができるものであり、公にすることにより、個人の権利利益を害する恐れがある」との条例の規定を適用し、非開示とした。
神野さんらは非開示を不服として意義申し立てをしたが、土田議長は市情報公開審査会(会長、伊藤忠通・県立大学長)の「議会の部分開示決定処分は適正」との答申を受け、申し立てを棄却した。
訴えでは、非開示の違法性について、議員の政務調査という公務の遂行に対して、人件費という名目で公金を支出しており、氏名や住所は個人に関する情報に当たらないとし、内容が十分に公開されなければ、家族や友人、支持者への給付、後援会などの政治活動への流用といった不正な利用を招きかねない、と主張している。
同市議会政務調査費の交付に関する規程の使途基準は、人件費を「調査研究活動を補助する職員を雇用する経費」と規定している。同市議会政務調査費執行の手引きによると、交付申請に当たっては領収書と雇用契約書それぞれの写し、勤務実態を示したものを添付する。金額は同市議会政務調査費に関する条例で、議員1人当たり月7万円が認められている。
土田議長の代理人は4月16日の第1回口頭弁論の答弁で、訴えの棄却を求めた。
第2回口頭弁論は6月18日午前11時半から開かれる。