独立行政法人の情報公開法に基づき、医療観察法病棟の外部評価会議会議録の開示を求めた記者の請求を、国立病院機構(東京都目黒区)が約1年間にわたり事務処理を行わず、放置していたことが分かった。同法の原則では請求があった日から1カ月以内に開示・不開示を決定する義務がある。30日間の期間延長ができるが、書面による通知が必要。同機構は「事務処理上のミスだった」と認めている。
問題の文書は、三重県津市榊原町の独立行政法人国立病院機構榊原病院・医療観察法病棟が2011年度に実施した外部評価会議の会議録。国立病院機構の話では、昨年3月に榊原病院が開示請求書を受理し、該当する会議録を同機構に送付した。通常であれば、黒塗りの不開示部分が妥当かどうかを同機構がチェックするなどして各病院に返送することになっている。同機構総務部の担当者が処理せず放置していたらしい。
病棟は、心神喪失者等医療観察法に基づき、地裁の審判を経て精神障害者を強制的に入院させる施設。外部評価会議は、運用の透明性を確保するなどの目的で国が毎年度の開催を関係医療機関に要請している。
医療観察制度は、心神喪失または心神耗弱の状態で他害行為を行った人に強制的な治療を行い、患者1人に対し年間約2200万円を投じるもので、国は「手厚い医療」を標榜している。所管は法務、厚生労働の2省と最高裁にまたがり、法が目的とする社会復帰の具体的な成果は公表されていない。
近畿初の専用病棟は奈良県大和郡山市にあり、重装備の保安型施設が精神障害への偏見を招く恐れがあるとされている。国内の28公立病院で計約700床が稼働している。身柄を拘束された人が受けた精神鑑定の精度にばらつきがあり、医療のセカンドオピニオンが保障されていない点でも疑問視する声が出ている。
傷害事件で収容された人の中には加療日数がわずか数日の微罪も含まれるほか、事件から1年近くが経過した後に検察官が強制治療を申し立てるケースもある。また、地裁の審判で「不処遇決定」となっても、必要のない鑑定入院をした人の拘束に対しては、刑事事件の無罪判決を受けた人が得る拘禁日数分の補償金に類する制度がない。こうした不平等を大杉光子弁護士(京都弁護士会)が論文で発表している。
全国的に施設が遍在する中、遠隔地から専用病棟に移送された患者の家族や支援者らが関係保有文書に対し「知る権利」を行使する上でも、今回のような事務処理ミスはあってはならないことだ。国立病院機構の担当者は「再発防止に向け、情報公開制度の管理簿を新たに作成する」と話している。