奈良県 奈良市土地開発公社「西ふれあい広場」問題 不明の事業計画書類、市の資材倉庫に
奈良県奈良市が公園建設を目的に市土地開発公社(2012年度末で解散)に用地を先行取得させたものの計画が頓挫した西ふれあい広場の問題で、不明とされた事業計画に関する書類が市公園緑地課の資材倉庫に残っていたことが、同課への取材で24日、分かった。基本計画や用地測量などの書類5件で、倉庫内を整理中に偶然、見つかったという。事業が完了していないにもかかわらず、書類が同倉庫に保管されていることについて引き継ぎは行われていなかった。
見つかったのは、1994年2月の用地測量の図面類、同年3月の現況測量の図面類と基本計画報告書、94年3月の計画を見直したものとみられる96年3月の基本計画報告書、同年10月の境界杭(くい)設置の図面類。いずれもコンサルタントなどに業務を委託していた。94年3月の基本計画報告書には計画の概要や基本方針、計画図、概算工事費などが盛り込まれている。
倉庫は市鴻ノ池運動公園にある。公園ボランティア関連の資材などを収納するためのものだが、市役所地下の書庫に収まらない公園緑地課の書類も保管していた。市が定める保存期間を超えているものの、必要と考えられた書類という。標準的保存期間は5年とされている。ことし4月、倉庫の雨漏り対策で庫内を整理するためロッカーを移動した際、中から西ふれあい広場の関係書類が出てきたという。このほかの書類も含め書類が入ったロッカーは6つあった。
市はこれまで、西ふれあい広場の事業計画に関する当時の書類で残っているのは平面図1枚のみとし、計画の具体的な中身や事業の経緯だけでなく、他に関係書類が存在したかどうかさえ不明としていた。記者が市情報公開条例に基づいて2011年9月に行った開示申請に対しても、計画の目的や経緯が分かる文書は存在しないと回答していた。市の第三者委員会「市土地開発公社経営検討委員会」の11年3月の報告書も、計画に関する資料は平面図のみとしていた。市議会からの資料請求に対しても、同様の回答をしていた。
唯一とされた同平面図は96年3月の基本計画報告書の図面の一つとみられるという。
土地開発公社による用地の先行取得は94年から00年にかけて行われた。同市二名7丁目のの山林など約4万8000平方メートルで、費用は約18億円に上った。しかし、道路が接続していないという根本的な問題を抱えていたため、市に買い戻されることなく塩漬け状態に置かれたままとなった。取得時に金融機関にした借金の金利だけが膨らんだ。市土地開発公社経営検討委員会は11年3月の報告書で、必要性のない土地を特定の個人の便宜を図る趣旨で高額で取得した疑いがあると指摘した。
花木幸治・公園緑地課長は「土地は登記の面積でなく実測で買う。広大な土地を買うのに面積を確定する用地測量は不可欠。見つかった書類はあって当たり前だった。書類作成から5年が経過した00年にも用地を取得しており、残しておいたのではないか」とした。ただ、課が自ら倉庫を探すことはなかったという。同課長は「倉庫に保管されていることについて引き継ぎはなく、怒られるかもしれないが、倉庫を探すという認識はなかった」とした。
一方、同事業の年次計画を示した書類などは見つかっていない。花木課長は「年次計画がなければ予算措置はできない。当時はあったはず」とする。