奈良県:野迫川・前村長時代、入札業者選定で審査会開かず
野迫川村の前村長(86)=在職1970~2010年=時代の入札をめぐる問題で、当時は村工事の指名競争入札の業者選定で審査会を開いていなかったことが、村への取材で分かった。すべて書面の回覧で済ませていた。村の業者選定審査要領はこうした持ち回り審議を認めているが、現在の村当局は「急を要する場合に限られる。本来は委員が集まってするのが当たり前。すべてというのはおかしい。審査会が存在する意味がなくなる」と疑問視している。
この問題は、村工事の入札業者指名をめぐり、指名を回避された村内の建設業者が村を相手取り起こした訴訟で、村側が指摘している。訴訟で村側は、前村長が官製談合に関わっていたとする指摘もしている。現在、訴訟の場は最高裁に移っている。
村が審査会を置く目的は、指名競争入札に参加する業者の選定で適正さを確保し、加えて村長による恣意的な判断を防ぐためとされる。村建設工事請負業者選定審査要領で設置を定めている。地方公共団体は通常、同様の制度を設けている。
要領によると、委員は副村長、総務課長、建設課長の3人で、会長は副村長。工事費500万円以上の契約について業者選定の審査を行い、設計金額5000万円未満は3~5社、同5000万円以上は5~7業者をめどに選定するとしている。
要領は、審査会の開催について、必要に応じ、その都度開くとし、過半数の出席がなければ会議を開き、議決をすることができないとしている。一方で、持ち回り審議をもって審査会に代えることができるとし、書面の回覧による審議を認めている。
村によると、前村長時代、審査会の議事録は作成されているが、実際に委員が集まって会議を開き、審議することはなかったという。建設課長が前村長と話をし、書類を作成、決裁に回すというような形が続いていたという。
中本浩三副村長は「要領では書面でも構わないということになっているが、すべてという意味ではない。急を要するにもかかわらず出張や病気で欠席者がいるなど、やむを得ない場合に限られる」とする。
前村長は取材に対し「審査会はなかったのではなく、後でしたと聞いている。職員からの『この業者とこの業者とこの業者で』という説明に、それはそうやな、というようなことは言っていた」とし、書面の回覧による審議の前に職員から業者選定について説明を受けていたことを認めた。一方で、「私が勝手に業者を決めて指示するというようなことはやっていない。役場で書類一つを書くのにも、ものを決めるのにも、私がすべて決めて、おい、これ出せと、そんなばかなことはあり得ない」と、業者選定に恣意的な影響力を及ぼしていないことを強調した。
審査会の在り方をめぐっては、訴訟でも争点になっている。現在の角谷喜一郎村長は当選後の発注工事で、原告の2社について前村長時代の官製談合で主導的立場にあったとして指名を回避した。角谷村長が審査会に出席し、2社を指名業者として選定した審査会の当初の決定を変更させたことに対し、奈良地裁は業者の主張を認めて裁量権の乱用があったとした。控訴審の大阪高裁判決では2社で判断が分かれ、1社については村の主張を認めた。