奈良県:取り壊し予定の奈良・旧都跡村役場、36年前の写真あった 市教委が保有、改修前の姿判明
奈良市がことし8月に取り壊しを予定している旧都跡村役場(同市四条大路5丁目)の36年前の撮影写真を、市教育委員会文化財課が保有していることが、同課への取材で17日までに分かった。現在のように改修される前の姿を確認できる。
旧都跡村役場は1933年に建てられ、40年に都跡村が奈良市に編入された後は、市の連絡所や公民館施設として使われてきた。県教育委員会が2011年3月にまとめた調査報告書「奈良県の近代和風建築」は、「最小規模の庁舎と議事堂が、ほぼ当初のままセットで残っている点で、貴重な存在」 と、歴史遺産、文化財としての価値を認めた。しかし、地元の都跡地区自治連合会は老朽化や耐震性の問題を挙げ、地域ふれあい会館への建て替えを要望。市は今年度の着工、完成を予定している。
写真は、市史編纂(さん)室が1977年12月7日に撮影したモノクロ4点。いずれも旧庁舎の外観を撮影したもので、斜め上からのものと正面からのものがある。
旧庁舎玄関の車寄せは現在、改造されて壁があるが、写真では屋根と柱のみ。窓は現在、アルミ・サッシに取り替えられているが、写真に写っているものは木製とみられる。また、旧庁舎と旧議事堂をつなぐ通路は現在、鉄骨製だが、写真に写っている通路には瓦屋根が見える。こうした点を除けば、現在の外観が36年前と大きく変わっていないことが分かった。
記者は文化財課に対し、旧都跡村役場の建築当初の姿が分かる写真を保有していないか問い合わせた。同課が調べたところ、市史編纂室の資料の中にこれらの写真があったという。旧役場の建設から現在までの経緯に関しては、把握されている情報が乏しいとみられ、建て替えを担当する市地域活動推進課なども写真の存在を知らなかったとした。
旧都跡村役場の取り壊しをめぐっては、日本建築家協会近畿支部奈良地域会が仲川元庸市長あてに保存活用を求める要望書を提出するなどの動きも出ている。市は、修理保存は建て替えより費用が高くなるとしてきたが、あらためて説明責任を求められており、修理保存した場合の費用の試算に着手。建て替えた場合と比較することにしている。